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ペダルネタを少々。
たぶん単発で終わります。
コラボの二人でちょっと百合百合しいかもしれない。
畳んでおくので自己責任でおねがいしまーす。
たぶん単発で終わります。
コラボの二人でちょっと百合百合しいかもしれない。
畳んでおくので自己責任でおねがいしまーす。
携帯に文字を打ち込んでいると、遠くから悲鳴が聞こえた。
これは自分にしか聞こえない声だ。悲しい、とても悲しい存在の、声。その声はすぐに消えうせ、あたたかい力の波動を感じ取る。
反射的に立ち上がり、教室を飛び出した。鞄は、まぁ後でいいだろう。いまは急がねばならない。
祓い、浄化した、と思っているはずだ。それが危ない。なまじ、この世界はとても普通で、秘めた力は強く、長い年月をかけて馴染んでいるとはいえ、今日まで平和に暮らしてきたのだ。
まだひっそりと残る暗い気配に、気づけるかはわからない。
全速力で廊下を走りぬけ、部室棟の近くまでやってきた。放課後の学校は、人がまばらですれ違う人も少ない。そんな彼女や彼らは何事だと目を向けるが、すぐに興味を失ったかのように自分の日常へと戻るので、ありがたかった。
なんとか誰にもぶつからずにそこへとたどり着いたときには、透子はペットボトルを片手に、なにやら悩んでいる様子でそこにいた。男子生徒が何人かいるが、それどころではない。透子の、祓っただろうそこに、まだ、濁りがある。
「透子!!」
叫ぶと、弾かれたようにこちらを見る。透子と、男子生徒全員がだ。見知った顔もあるみたいだが、構っていられない。
透子の腕を掴んで、引っ張る。その反動を利用して、室内から伸びる暗い靄との間に滑り込ませた。放り投げてしまった透子は、男子生徒にぶつかるようにして、受け止められる。向かい合った透子に危険はないと判断して、ふっと顔を緩めた。彼女はぎゅるっと目を丸くして、自分を見ていた。
後ろへと引っ張られる力に、逆らいはしなかった。視界の端から、靄に侵食されていく。見える光景が周りから黒く塗りつぶされていく。悲しい悲鳴が大きくなって、目を閉じた。
「おかえり」
そう呟いて、背中から床に落ちた。
目を開けると、靄はもうない。源泉となっていた魂は、どうやら今度こそ浄化されたようで、気配はなかった。穢れだけが、自分の内にある。この感覚も久しいもので、小さく笑った。
「空!!」
倒れたままでいると、上から透子が降ってきた。仰向けに倒れる自分を組み敷くようにして、顔の横にばんっと手をついて覗き込んできたのだ。そのことに目を丸くしていると、どうやら穢れを察知したようで、痛ましそうに顔を歪める。
「だから、ほんと、空は……」
思いが言葉にならないらしい。でも、いいたいことはわかる。このせいで、どの世界でも透子を傷つけてきたのを、知っているからだ。
わかってるよ、といわんばかりに微笑んで、泣きそうな顔に手を伸ばした。頬は柔らかく、あたたかい。生きている。それだけでよかった。
この世界でも命を賭けられては、たまったもんじゃない。
「……ねぇ、君たちの世界からそろそろ戻って来てくれないかい?」
戸惑った声にまた笑って、透子を支えながら、這い出るように体を起こした。
声の主である泉田さんと、その後ろには黒田さん、そして何故か押さえ込まれて暴れている真波がいる。どうやらここは自転車競技部の部室であったらしく、透子の浄化にも居合わせていたようだ。
「まぁ、話すと長くなるので、ミーティングルーム借りてもいいですか?」
へらっと笑うと、やはり戸惑った顔をしているが、「わかった」と声が返ってきた。
***
案内されたミーティングルームで、透子と隣り合って座っている。その対面には、泉田さんと黒田さん、更にその後ろには福富さんと荒北さんが呼ばれて、各自思い思いに座っていた。何故か真波は自分の隣にいる。しかも不機嫌そうにだ。何故だ。ていうか邪魔なんだけど。
「さて、説明してもらってもいいかな」
「そうですねー」
落ち着いたところで、と泉田さんは口を開くが、真波はどうやら無視という形でいくらしい。構っていられないのだろう。同感だ。真波はずっとこちらを見ているが、無視だ無視。
透子と一度、目を合わせて、口を動かす。あんまり説明は上手くないんだけどな、なんて思いながら、透子と自分は古い付き合いであること、オカルト的な話ではあるが、あぁいうものを祓えたりする力があることなど、簡潔に話した。細かい補足は、透子から入りつつ、みんな一様に驚きながらも、大人しく耳を傾けていた。
たぶん納得するだろうというところで、荒北さんが鼻をひくひくさせる。
さぁ、来るぞ。
「お前、全部話してねぇナァ?」
「そうですね。話してないです」
「真正面からいい度胸じゃナァイ」
「ですけど話せないものは話せません」
ぴりっと緊張が走る。荒北さんは凄んで見せるが、いくつもの世界を隔てて戦い抜いてきた自分は慣れっこだ。むしろ可愛いとさえ思う。にこり、と笑って流した。それが気に入らないのか、荒北さんは更に眉間にシワを寄せる。
「もう危険はないです。勘の良い荒北さんならわかるでしょ?」
「わかんねーよ。東堂いりゃあなんかいってたかもな」
「ないです」
割り込んできた声は、思いの外涼やかだった。しかし、目をむけると顔はとても不機嫌そうで、頬杖をついてこちらを見ている。
「真波、本当か?」
「えぇ、まぁ。もう、変な感じしませんもん」
「そうか……」
福富さんが頷き、どこか困ったかのように腕を組む。このような現象は初めてなのだろう。対処に困って当然だ。そこから何かチャリ部での話し合いが始まり、透子と二人で蚊帳の外に置かれた。とりあえずなんとかなかったかな、と息を吐き出す。
「お疲れ様」
「透子こそ」
背中を椅子に預け、体の力を抜くと、透子が苦笑した。もう一度大きく息を吐き出して、完全に体の力を抜く。
「予想外だったねぇ」
「そうだねぇ。まさかだったわ」
ずるり、と体を傾けて、透子の肩に頭を預けた。ふわり、と香るシャンプーの匂いと、女子特有の柔らかさに安堵を覚える。
久々にあれと相対した。一戦交えたようなもので、思いの外消耗している。この世界では、初めて力を使ったのだ。当然だった。透子も体が重いだろうに、消耗具合が昔から激しい自分に対して気を使っているらしく、ずっと肩をかしてくれちえる。その優しさに甘えて、ぐりっと頭をこすりつけて、透子と「くすぐったい」「あとで同じことしてもいいよ」「膝枕がいいなー」「任せろ」なんて笑う。
そうやって、なにやら重苦しく話し合うチャリ部を眺めながら、癒しを堪能していると、透子とは逆のほうから腕を引っ張られた。
そのまますぽんっと真波の腕のなかに収まり、羽交い絞めにされる。
おい、何事だ。
「ねぇ、そろそろ返してよ」
透子が目を丸くして、頭上にあるらしい真波の顔を見ている。
透子と繋いでいた手を離そうと、真波が手首を掴んだ。透子の手を握る前に、透子のほうから握り締められる。ゆるく繋がれていただけの手の結びが硬くなり、真波の引っ張る力に対抗する。
「……」
「……」
火花が散ったような気がした。
透子にしては珍しく、真波にしても珍しいことに、どうすればいいのかわからない。ていうか、思いの外強い疲労感に、どうにかしようという気持ちが生まれない。
可愛い睨み合いは、気づいた黒田さんが割って入るまで続いた。
「空ってさぁ……」
「なに?」
「いや、……なんでもない」
「えー?」
帰り道に手を繋いで歩いていた透子は、どこか遠い目をして教えてはくれなかった。
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前にひとつだけペダルネタをかいていらっしゃったと思うのですが、それを読んだときからこれを書きたかったので書きました!
予想外な展開になったんですけど、まぁイチャつけたので私はもういいです!楽しかった!!
うちが黒バスからの派生ネタでやっているので、黒バスで再会したあの二人をそのまま箱根学園に入学させました。
泉田くんと同い年らしいので、傍観主さんは二年生、跳躍主は一年生でかいてます。
コラボネタで学年差がでたのは初めてじゃないですかね?これはこれで楽しいですね!!跳躍主が甘えているのは、どことなく年下だからだと思います。いまそう思いました。
この世界軸には跳躍主と双子という妹はいません。
あー楽しかった。
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