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ふらっと徒然に。
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 それなりに一般女子高校生をやっているので友達はいる。精神年齢が馬鹿高いためにそつなく対人関係を築けるため、それなりにクラスの人たちと仲良くできているし、教師陣への評価もまぁまぁだ。不満はない。適度に高校生活を謳歌している。部活以外は。

「空ー、ご飯食べよ」
「おぅ、食べよ食べよ」
「あ、私もー」

 友達がガタガタッと前の席の椅子を引きながらいう言葉に、オウム返しのように返した。先生に呼ばれていたほかの友達も混ざっていつもの三人でお弁当を突き合わせる。
 鞄からお弁当を引っ張りだして、一つの机で女子三人のお弁当を広げて他愛ない話題で、騒がしい教室の一部と化す。あぁ、平和だなぁ、なんて思う。平和、なんて素晴らしい言葉だろうか。けらけら笑いながらも内心じーん、と感動しながらご飯を噛みしめた。

「空ちんシューマイちょーだい」

 言うと同時にすぐ横から腕が伸びてきて、お弁当のシューマイを摘み上げられた。何もいう暇なくそのまま紫原の口の中へと吸い込まれていくのを目で追う。友達が「あ、紫原くんだー」「また空のお弁当とってー、やめなよー」と笑いながら後ろを見上げているがそれどころではない。好きなおかずは最後に残すタイプの自分としては、最後の一つに残ったシューマイを取り上げられたということはとても大きな問題なのだ。
 人の気も知らずに咀嚼して「おいしー」とかいって指を舐めてる紫原を凝視する。

「空ちんおいしかった、ありがとー」
「・・・あぁ・・・。それなら、うん、よかった、ね・・・」

 あぁ、シューマイ、私のシューマイ、また今度食べるね・・・。
 わしわし、と紫原に頭を撫でられてるそばで、友達たちがこそこそと「紫原くんって絶対空のお弁当しかとらないよねー」「もしかして・・・もしかしてなんじゃない?」「えーうそっなにそれ楽しい!」なんて言ってるけど全部聞こえてるんだからなお前ら!!!!お前らのおかずよこせちくしょうシューマイ!!!


***


「紫原くん」
「なに?空ちん」
「なんで一緒にご飯食べてるの?」

 いつも思う。ふらっと人のお弁当を取りにきたかと思ったらそのまま女子三人に混ざって自分のお弁当を食べ始めるのだ。最初されたときは三人で驚いていたものだが、いまとなってはもう慣れっこで紫原も見事に女子三人の輪になじんでいる。クラスのやつらも「まぁ紫原だから・・・」な雰囲気で気にも留めなくなった。そもそも自分の弁当あるならとるなよ。人の弁当を。

「えー?一緒に食べちゃだめなの?」
「違くて、バスケ部のメンバーで食べてるんじゃないの?学食でさ」

 帝光中学校は驚くことに学食がある。給食ではない、学食だ。食堂があるのだ。中学で食堂ってどういうことだよ、なんて思ったのは記憶に新しい。というかいまでも思っている。給食が基本だった公立出身としてはあり得ない。私立恐るべし。

「んーでも今日はお弁当くれたしーそしたら行かなくてもいいじゃんー?」

 大抵の生徒は食堂で食券を買ってご飯を食べるのだが、お弁当持参も認められているため、教室でお弁当を広げる生徒も多い。紫原は家庭の事情かどうかは知らないが、7割学食3割お弁当という割合で過ごしているらしい。

「うん、まぁ行かなくてもいいけど、別に自分らと食べる必要は」
「まぁまぁ空、いいじゃん!うちらも楽しくおしゃべりできてるしさ」
「そうそ、特に問題はないでしょ?」
「いや、てかさぁ・・・」

 にこにこと笑う友達に渋い顔をする。
 紫原はバスケ部だ。あの赤司がいる、バスケ部。しかも紫原は赤司にかわいがられているし、本当ならば本気で関わりたくない。ある一定の距離を保ちたいのだ。しかもお前ら、紫原と仲良くなってバスケ部メンツに近づこうという魂胆が丸見えなんだよ。人をダシに使うなよ、自分は関わりたくないんだって。全く、中学生が色めきだって、なんだかとても複雑だ。

「・・・まぁいいや」

 めんどくさい。

「・・・空ちん、どうし」
「紫原」

 呆れた表情をした自分に気づいたらしい紫原の言葉を遮って聞こえてきた声に肩を震わせる。この、声は。全力で避けていたこの声は。

「あ、赤ちんー」
「紫原、今日は屋上でミーティングだっていっておいただろう」
「あれー?そだっけー?」
「そうだ。今回はみんなで弁当を持ち寄ってするってこの間話しただろう」
「あ、そっか、思い出した。だから今日朝変なこといわれたのかー」

 交わされる会話に冷や汗を流しながら紫原の方を振り向けない。振り向いちゃいけない気がする。なに赤司登場できゃあきゃあいってるんだよお前ら。赤司の怖さを実感したらそう黄色い声で騒げるのかコラ。

「・・・紫原、もうすんだのか?」
「うん、空ちんと食べてたー」
「・・・いつも昼ミーティングに遅れるおもったらこれだったのか」

 内心ぎくり、とする。視線が後頭部に突き刺さっている。これは、なんだか、やばい。めんどくさいと思わず紫原を諭しておけばよかったあああああ!!

「む、らさきはらくん、もうご飯終わったんだし、ミーティングいってきなよ」
「うん、そうするー、赤ちんごめんね」
「今回は許そう。次回はやめてくれよ」
「うん、気を付けるー」
「そこで高野さん」

 名前を呼ばれた。これは、やばい。本能が告げている。面倒なことになるぞ逃げろ!と。

「ちょっとトイレいってくる」
「高野さん、少し話がある」

 ガタン!と席を立ちあがり聞こえなかったふりをしたというのに、完璧なタイミングで腕を掴まれた。
 あぁ、終わった。

「高野さんもミーティングに参加してくれないか?紫原が毎回こうじゃ困るんだ」
「や、自分、関係ないですし・・・」
「空ちんがいくなら俺も最初からいくー」

 なにぬかしてやがるんですか紫原くん。

「君は紫原の隣で弁当を食べるだけでいい。特に問題はないだろう?」
「いえ、だから、」
「じゃあ次からよろしく頼む」

 赤司いっぺん××。
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 帝光中は大きい。クラスなんてアホみたいにある。生まれが田舎でクラスも3つしかなかったとんでもない僻地出身としてはびびるぐらいにある。その記憶は何十年前の話だよって話になるのだが、基本的な幼少時の記憶はやはりそこへとたどり着くためにこの思考回路は仕方ないと思うのだ。
 とにかくでかい。広い。設備が良い。さすが私立。そんな変な感動とともにこの学校に通っているわけだが、庶民中の庶民で学校は必ず公立だった自分はほんと場違いだよなぁ、なんて毎朝思いながら教室へと向かっている。祖父母に育てられ家族全員で節約にいそしむ家庭で育った自分は、どうしても私立は裕福層が通うという古臭い認識が抜けないのだ。
 やはり何十年前の話だよ、という話になるのだけど。

「・・・根底がそこだから仕方ない、仕方ないよな」

 もはや日課となった毎朝の自己暗示である。


***


「おはよー空ちん」
「・・・おはようございます」

 席に行くための通過点には壁がある。どでかい壁が。

「朝からご苦労さまだねー」
「そういう紫原くんもお疲れ様です」
「別にー。赤ちんが付き合えっていうから付き合ってるだけだしー」

 もそもそと赤司にもらっただろうお菓子を頬張る紫色の馬鹿みたいに大きい子供。
 紫原敦。まさかのキセキの一人の隣が自分の席なのである。
 ひくり、と頬がひきつり、出そうになるため息をかみ殺しながら紫原の奥にある席へと向かう。本当、 関わり合いになりたくないというのに、なんでこうも仕組まれたかのように、強制的に、有無を言わさずに、圧倒的な流れによって巻き込まれていく。体質なのだろうか。体質、なのだろうなぁ。ならばせめて、平凡に死なせてくれ。
 かみ殺したはずのため息が生き返り、世界へと放たれてしまった。

「空ちん、朝から暗くない?」
「あぁ、荷物が重たいだけですよ」

 ドカッ、と荷物を机に乱暴に乗せる。バスケは楽しい。体を動かすことがすきだ。だからやっていたい。でも、なぁ。今後のことを思うと本当にため息がでる。
 隣から突き刺さる視線を無視しながらまた乱暴に椅子に座り、鞄から教科書を取り出して引き出しの中へと突っ込んだ。一限目は現代文か、眠くなるなぁ。

「・・・空ちん、これあげる」
「え?」

 べし、と無駄に長い腕が隣からのばされ、握りこぶしの中から転がり出てきたチョコレートに目を丸くする。紫原がお菓子をくれた・・・だと・・・?そんな馬鹿な。隙あらば人のお菓子を奪っていくような紫原からお菓子を渡される日がくるだなんて夢にも思わなかった。

「空ちん、なんか元気ないみだいだから、特別ー」
「あ、うん、ありがとうございま・・・ってなんで机くっつけてるの」

 続いて発せられた言葉にまた驚きながらお礼を言おうとすれば、ガンッ!と痛い音と一緒に机が繋がった。いやほんとなんでだよ。

「俺、教科書忘れちゃった。みせてー?」

 机に突っ伏して、顔だけこちらに向けていつものだるそうな口調でいう紫原。イケメンずるい。いやその前に、忘れただなんて嘘いうなよ自分は知ってるぞ教科書ほぼ全部置き勉してるの知ってるんだぞだから、だから。
 口から出かかった言葉は口を引き結んで飲み込んだ。そうだ、紫原は大きな子供だった。他人の感情に、敏感なのだ。子供は感じ取る、鋭く捉えるのだ。
 厄介な隣人だなぁ。

「・・・いいけど、次はちゃんと持ってきてよ」
「はいはーい」

 ころん、と鞄から取り出したカントリーマアムを挙げれば上機嫌に笑う出す。
 その笑顔に癒されている自分はまだまだだなぁ、なんて思った。


***

「紫原、起きろ」
「先生、起きませんむりです」
「そうかじゃあ高野、ここ解いてくれ」
(貧乏くじひいたクソ!!)





 耳にブッさしてるイヤホンを引き抜いて校門をくぐる。すがすがしい空気に包まれた朝の校庭には朝練のためにアップしている運動部ぐらいしかいない。みんながんばるなぁ~なんてのんきに思いながらも、自分も朝練をするために早めに登校しているため人のことなどいえないのだが、それでもがんばるなぁ、なんて思ってしまうのは生きた年数によるものだろう。
 くぁ、と大きく欠伸をしてipodを鞄にしまった。
 さぁ、今日も長い一日がはじまる。


***

 準備をして体育館へといけばボールのつく音とバッシュが擦れて聞こえるスキール音がする。はて、校舎から遠いこの第三体育館の使用者は少ないはずだが、朝からわざわざこっちの体育館に来る人など珍しい。かくいう自分も珍しい人間ではあるのだが、ちゃんとした理由があるためこちらへと赴いているのだ。誰が好き好んで部室からも校舎からも遠い体育館で練習するものか。
 奇特な人間がいたものだなぁ。そんなことを考えながらガラリ、と戸を引いて立ち止まり、「おはようございます、よろしくお願いします」と大き目の声で体育館に向かって一礼する。そして体育館に足を踏み入れて気づく。
 誰もいなくね?

「・・・・まじか」

 ここで頭をよぎるのは少し前に聞いた噂話。第三体育館にバスケをする幽霊がでるだなんて、そういうありきたりな話。しかし、ボールの音とスキール音が聞こえるのに入ったら誰もいない、とか、噂のまんまで、ざっと一瞬で血の気が下がる。
 まじか、まじか。まじだったのか。いや幽霊というか怨霊と呼ばれる得体のしれないやつらと戦ったことがあるためそれなりに耐性はある。しかし、しかし、だ。ここは平成の世。源平合戦という戦場でなければ怨霊とかいう敵がいる異世界でもない。平和な、ある意味「現実世界」だ。この世界でオカルト的な現象といえばやはりまぁそういうわけでいやしかし朝から活動する幽霊がいるだなんてそんな話聞いたことが、

「すみません」
「ぎゃあああああああああああああ」

 迷走する思考をシャットダウンするかのように聞こえた声に声を張り上げて横へと飛んだ。思わず構えて戦闘態勢をとってしまったが、ここは戦闘もなにもない平和な時代だ。まったくもって必要ない。それによくよく見ればぽかん、とあっけにとられている男の子がいる。
 あぁ、黒子だ。

「・・・そんな反応されたの、初めてです」
「はは、はは・・・は・・・、だろうね・・・」

 普通の人は叫びはするだろうが、いままさに敵を打ち取らんとするような体制まで瞬時にとれないだろう。とるはずがない。
 何度でもいうが、この世界は平和な時代だ。

「・・・なにか、やってらっしゃるんですか」
「あ、はい・・・武道を・・・少々・・・趣味で・・・」
「なるほど、わかりました。だからそんな構えなんですね」
「えぇ・・・そんな感じです・・・」

 エンカウント2回目の黒子は、とってもマイペースだった。


***

 第三体育館といえば黒子が練習している体育館だ。しかしそれは夕方、部活が終わった以降の話であって朝練もここだなんて聞いてない。ってか知らない。聞いてみれば、朝練もこっちの体育館でやりはじめたんだとか。第一体育館はどうも手狭らしい。帝光中のバスケ部は部活動に熱心な生徒が多いようだった。

「高野さんはどうしてこっちへ?」
「黒子さんと同じ理由ですよ」
「でも、こちらまで来るほどには混んでませんよ」

 疑問符を浮かべる黒子に笑顔が固まる。いや、確かにそうなんだが・・・そうではるのだが。どうしても避けたい理由があった。

「確かにそうですけど、リングとか独占したいんですよ。集中したいし。そう考えると、こっちに来ちゃうんです」

 ぐっと足を曲げてボールを放つ。高く放られたボールはリングに触れず、ネットさえ揺らさず落ちた。

「・・・そうでしたか。それはなんとなくわかります。設備とかは第一体育館の方が良いですけどね」
「そうですよねー。こっちも同じぐらいの設備にしてくれたら良いんですけど」

 第一体育館は第三まである体育館の中で一番広く、設備も一番充実している。そのため自主練をする際には、みんなほぼ第一体育館へと集まるのだ。そのため人数が多いとどうしても混み合ってしまい、手狭になってしまう。黒子が朝練をこっちでやる理由はそれだ。あといつも第三体育館でやっていて勝手がいいということもあるだろう。
 自分も同じではあるが、最大の原因は朝練をしているメンバーにある。いるのだ、あいつらが。キセキの世代と呼ばれるようになる、あの色とりどりのメンバーが。
 目を付けられたからにはとにかく関わらず逃げて逃げて逃げ通さなければいけない。これまでの経験からして絶対に平穏ではいられない。だから、まず、関わらないようにしなければならないのだ。こういう小さなところからでも。

「高野さんはきれいなフォームでシュートしますね」

 とかいいつつ黒子っちと仲良く練習してるんだけどね!!!

「あぁ、ありがとうございます」

 内心半泣きになりながらも黒子からの賛辞には丁寧に返した。
 あぁ、今回も平穏に生きられないのだろうか。
 時折飛んでくる言葉に反応しながら、この先のことを思うとため息がでた。

うおおおおおありがとうございます!!許可くださって!!
あ、終焉についてです。

というか、ほんとその通りで頑張ってもなかなかにwwwガチ心中ルート突っ走るんで困るww頑固な子たちですwwwまったく。
でも私があのバッドエンドが悲しすぎるのでどうにかしてみたいと思います。てかどうにかしてみた。精一杯がアレだ。ほんと申し訳ないと思いますが・・・えぇ・・・難産だったZE

しかし呼び方とかほんとまったくよくわからないので間違ってたら申し訳ないのですけども。。。
言い訳しときますが雰囲気小説ですよ、完全なる。うん。反省はしている。悔いはないがな!!


とりあえず続きから!
 帝光中学校。
 今度自分が入学する学校らしい。帝光。へぇ、帝光。うん、聞き覚えがありすぎて頭痛がする。

「空?大丈夫か?」
「あ、はい、大丈夫、うん」

 つい敬語になってしまうのを抑えて気を使ってくれた「父親」にへらり、と笑う。確かにこの「父親」は自分の父親ではあるが、大変申し訳ないことに自分が記憶している「父親」と異なるため、どうも敬語を使ってしまいそうになり困る。最初から敬語キャラでいければよかったのだが、自分の口調はそうじゃないためごまかしがきかない。
 転生なんて面倒なものだ。

「帝光ってバスケの強いところでしょ?進学する学校はできればバスケできる学校がいいって確かに相談したけど、まさか帝光の名前が上がるとは思ってなかったからびっくりしただけだよ」
「そうか」
「うん。帝光中か、そうだね、行ってみたい、けど受験が気になるなぁ」
「なに、お前の学力なら大丈夫だろう」
「そうかなー・・・。チャリ通できる中学近くにあるし、そこでもいいとは思うんだけど」
「お前が数少ないわがままだからな、思いっきりさせてやりたいのさ」
「ありがたいけど私立じゃん」
「子供がそんなところ気にするな。相変わらずお前は謙虚だな」

 はっはっは、と笑う父親に苦笑する。気にするよ、自分は「この体」の人生をつぶしたのだから。
 本当、厄介。

「とりあえず受けてみなさい」
「はい、ありがとう、・・・お父さん」

 ごめんなさい、ありがとう。


***


 入学式が終わる。真新しい制服と胸の祝いの花がまぶしい。
 今日、自分は帝光中学校に入学する。
 何校か試験を受け見事全部受かったわけだが、自分的にはその中の他の公立中に行きたかった。もちろん父親にはそう訴えたが父親は帝光中をごり押ししたために帝光となった。やはり弱いのだ、「親」には。
 白いブレザーが目に痛い。あぁ、何故帝光なんだ。ここは普通の世界だと安心していたのに。あぁ。モロすぎて嫌だ。こんなことになるならバスケなんてしなければよかった。いや、バスケ好きだからやりたかったんだけども。あーもう。
 なんでまた漫画の世界とかそういう世界なの。

「っと、ごめんなさい」

 つらつらと恨み節を考えてながらぼんやりと帰り道を歩いていると、誰かとぶつかった。知らず知らずのうちに俯いて歩いていてしまったらしく、完全に自分の前方不注意だ。あわてて顔をあげて謝る。そして、硬直。

「いえ、僕もぼんやりとしていました。すみません」
「・・・イエ」

 あああああああまじかよ!!!!!!

「・・・?ぼんやりとして、どうかしましたか?」
「あ、いえ、大丈夫です。君も、怪我とかありませんか?」
「えぇ、大丈夫です」

 とっさに答えて表情を作る。背中の冷や汗がやばい。しょっぱなからこれだなんて、先が思いやられる。いや。、いままでも経験からするに、自分は巻き込まれやすい。何故か、そういう運命線、とでもいうのだろうか。そう、物語の渦中に放り込まれる確率が高い。どこぞのお姉さまのせいで。
 だから主人公の黒子テツヤに鉢合わせるだなんて、そう、想定はしていた。しかし時期が早い!!!!

「それはよかった、です」
「君も怪我はなさそうですね。ぶつかってしまいすみませんでした」
「いえいえ、こちらこそ。では」
「えぇ、では」

 何事もなく別れる。別れられた。よかった。黒子っちはそういうキャラだものね!よし、このまま避けて避けて平凡に生きよう。それが、良い。
 そうやって、生きたい。


***

「スターティングメンバーは、」

 監督の言葉を聞きながらボールを持ち直す。隣にいるチームメイトには「死んだ魚の目をしてるけど大丈夫?」だなんていわれるけど、「大丈夫」とは返したけれど、あぁ、ほんと、もう、どうしてこうなった。

「最後は高野。ホジションはSG。外からばんばん打ってけ」
「はい」
「今回の一年生は強い子たちがそろっているが、強ければ強いほど丁度いい。男子と女子では差があるだろうが、勉強するところはたくさんある。存分に盗んで来い」
『はい!』

 みんなの声がそろう。女子はスポ根だよなぁ、なんて思いつつ、男女バスケ部の練習試合という事実に泣きそうになった。なにそれ、知らない。名物だなんて、知らないよ。そもそもなんで自分がスタメンなのかさえよくわからない。
 入部して半年。まだ半年だぞ、半年。
 あぁ、まじで、本当に、

「男子バスケ部対女子バスケ部の練習試合をはじめます!」

 どうしてこうなった!!!!

「一同、礼!」

 むなしく笛の音が鳴り響いた。



***


「君はスタメンででてたSGの子だろう」

 男子には圧倒的に負け、部室で着替えながら軽く反省会をした後の、のんびり一人で帰ろうとした時だ。
 声をかけられた。何事、と振り返れば赤い髪をした少年が紫と緑と青とを引き連れて立っていた。おぉ・・・なんて色とりどりなんだ。

「あれー?どうしたのー?」
「あっ、いや、ちょっと驚いただけ、です」
「あ?なんでだよ?声かけただけだろ?」
「青峰、これ以上怖がらせてどうする。一般女子からすればこんな図体のでかい男にそろって声をかけられれば驚くのだよ」
「そういうことだ。さて、いきなりすまないね」
「いえ、」

 ほんとだよ!!なんだんなだよ!!!お前らでかくてびびるんだっての!!!しかも関わりたくないんだよ!!!!オヤコロとザリガニ蝉とんまい棒とツンデレ変人とがそろいもそろってなんの用なんだよ!!!早く返してくれよ帰りたいんだよ疲れてるんだよお前らに叩き潰されたからな!!!

「君は今日、とてもいい熟練された動きをしていたね。ついこの間まで小学生だったとは思えない」
「あ、ありがとうございます」
「ミニバスでもやっていたのかな?」
「はい、まぁ・・・物心つくごろには、バスケやってました」
「お、俺と一緒だな!」
「そ、そうなんですね」

 にかっと笑うピュア峰がまぶしい。

「・・・それにしても、3Pを打ちなれていたな。ミニバスでは3Pなどなかっただろう?」
「そりゃ半年、打ち続けていたので・・・」
「それはうちの緑間も同じだ。でも、それ以上の慣れを君に感じた」

 早く解放してくれないかなーなんて思っているところに、赤司が鋭い目で痛いところをついてきた。「あー・・・」とつぶやきながら目を泳がせる。困った。前世でバスケをたしなんでいたから、なんて言えるはずもない。どう誤魔化したものか。鋭すぎるだろう、赤司。

「練習量が違うから、じゃないですか」
「緑間以上に練習しているやつなんかそうそういねぇぞ」
「あー・・・練習量というか、年数?が違う、的な」
「それってどういうことー?」

 あーもうめんどくせぇな!

「・・・昔から、バスケの試合とかを、テレビでよく見てて。3Pもそれで知って。自分はフィジカルもPGもする器用さもないから、3Pでがんばろうって、小学生のときから練習してたんです」
「・・・なるほど、それで年数、というわけか」

 赤司の痛すぎる視線を受けながらしどろもどろに話してみると、思いのほか及第点をいただけたようだ。一応は納得してくれたようで、ほかの人たちも「それでかー」とかいろいろ言葉をもらしている。

「君は特に秀でたところも目立った才能もないが、努力は素晴らしい」

 アッハハハハ、耳に痛いですねー。

「俺たちは男子と女子だが同じバスケをプレイする者同士、仲良くしてほしい」
「あ、はい、光栄です、ありがとうございます」

 どうやら気に入られたようで、へらりと笑い返しながら差し出された手を握った。仲良くしなければならないらしい。
 あー困ったな。これは。ほんと困った。関わりたくなかったのに・・・。
 どうすっかなーと考えながらするりと握った手を放そうとして、またぎゅっと握られた。

「隠していることも、いつか教えてくれると嬉しいね」

 こっそりと。もう帰ろうとしている後ろのみんなには気づかれないように、自分にだけ聞こえるようにそうつぶやいた。
 笑顔で。

「え?」

 目を丸くして、本当に心の底から疑問そうに、そう返してやった。一切反応してやるものか。動揺なんて悟らせない。こちとらお前らより長く生きてきたんだぞ!!

「・・・いや、なんでもない。俺の気のせいだったようだ」

 ではまた。なんて別れた。
 ほんともう、魔王だよあいつ。




(最後ダレたけど勘弁。)
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