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負っている傷が痛む。傷の具合からして長くは持たない。短期決戦で行かせてもらおう。
そう冷静に判断し、とった行動はなかなかに最悪な行動だった。
「動くな!!」
近くにいた非戦闘要員の腕を捻って後ろで掴んで叫べば、面白いくらいに全員の動きが止まった。特にあの毅然とした態度で問いかけてきた少年のうろたえっぷりが中々に傑作だ。なるほど、あの少年のいい人か、この赤髪の御嬢さんは。
表面上、冷静な態度を保っているが、まだまだ修行不足といったところだろう。鋭い者にはバレバレである。まぁ自分の好きな人が人質にとられるというシチュエーションでは、うまく冷静にふるまえてはいるとは思うがな。
「さて、君たちに紳士的な態度を要求しようかな」
「人質を取っておいて紳士的に、とは無茶をいうな」
「こちらからすれば正当防衛ですよ?」
隙を狙いつつも鼻で笑う少年ににっこりとほほ笑んで、赤髪の少女の首元に怪我をしないように、しかし遠目からはギリギリまで押し当てているかのように突きつける。ほら、顔色が変わった。
自分の弱みを早々に露見させるなんてまだまだ拙い限りだな。
「こちらからの要求は三つ」
「なんだ」
「一つ、命と衣食住の保証。二つ、その後の自由。三つ、黙秘権の権利。これらを守ってくれれば君たちに危害を加えはしない」
「・・・随分と都合の良い条件だな」
「人一人の命に比べたら安いものじゃない?気が向けば君たちのために剣をふるってもいい」
「信じられん」
「まぁそうだろうね。それじゃこの人間が死ぬだけだ」
小さく「動かないで」とささやいて更に剣を突きつける。本当にギリギリまで剣を突きつけているから動かれると傷つけてしまう。頼む、恐怖で動かないでくれよ。顔にはあくどいと思われる笑みを浮かべつつ、内心冷や冷やしながら殺気を問答無用にぶつけてくる少年と向かい合っていた。
幸い、赤髪の少女は聡い子らしく、おとなしかった。助かった。マジデ。
「・・・」
仕方ない。
「君、その身なりと立ち振る舞い、王族だろ」
「・・・何が言いたい」
「王とはなんだろうか」
「・・・何が、言いたい」
「王の務めはなんだろうか?国を守ることか?それじゃあ国とは?玉座か?土地か?金か?」
「・・・」
「違うだろ」
「民だろ」
少年の目が見開かれる。少年といわず、居合わせた人間のほとんどが驚いたように、虚を突かれたかのように見開いている。よし、いける。この国は少なくともまともな思考で運営されているようだ。
これならもう少しだ。
「たった三つ守ればこの人間は助かるし、この三つさえ守れば何をされても構わないといっているんだ。自由とはいったが、監視をつけてもいい。それは構わない。むしろつけないほうが神経を疑うな」
「・・・」
「何を迷ってんの?一人の命を差し出して百人助かるなら、一人を差し出すべきだ。上に立つ者はそういうものさ。だが、ここは違う。わかるだろ?なぁ、高みの見物を決めてる上の人?」
「?!」
くるり、と右足を軸に回転して上を見上げれば、バルコニーの手すりに肘を乗せて緩く笑いながら見下ろしている男がいた。少年と似通った顔立ちから、兄弟だろう。なんとまぁ、食えない顔の男だ。
「へぇ・・・よく気づいたね」
「気配には敏感なもので。そこの木の上にいるヤツもそろそろ下げてもらえないかな」
「なんだ、ばれてたの」
ガサッ、と逆さになって黒髪短髪の男が姿を現した。そのことに場がざわついて、気づいていなかった人間へ朗らかに対応する。突き刺さる殺気が痛いままではあるが。
「お前は面白いな。ゼン、もういいよ。要求をのもう」
「お、ありがとー」
「ただし、君のいうように監視はつけさせてもらう。誰にするかはゼンに任せる」
「はい、兄上」
あとはよろしく。そう言い置いて男はバルコニーから姿を消した。ふーん、実権を握っているのはあの男らしい。通りで。
突き刺さる殺気が後々厄介そうだから、早々に赤髪の少女の手を放して少年たちの方へと押しやる。驚いた顔をして振り向いた少女には笑顔で手を振り、兵士に囲まれたまま口を開いた。
「自分は空っていうんだ。よろしくね」
さて、最低限は確保したがどうなることやら。
そう冷静に判断し、とった行動はなかなかに最悪な行動だった。
「動くな!!」
近くにいた非戦闘要員の腕を捻って後ろで掴んで叫べば、面白いくらいに全員の動きが止まった。特にあの毅然とした態度で問いかけてきた少年のうろたえっぷりが中々に傑作だ。なるほど、あの少年のいい人か、この赤髪の御嬢さんは。
表面上、冷静な態度を保っているが、まだまだ修行不足といったところだろう。鋭い者にはバレバレである。まぁ自分の好きな人が人質にとられるというシチュエーションでは、うまく冷静にふるまえてはいるとは思うがな。
「さて、君たちに紳士的な態度を要求しようかな」
「人質を取っておいて紳士的に、とは無茶をいうな」
「こちらからすれば正当防衛ですよ?」
隙を狙いつつも鼻で笑う少年ににっこりとほほ笑んで、赤髪の少女の首元に怪我をしないように、しかし遠目からはギリギリまで押し当てているかのように突きつける。ほら、顔色が変わった。
自分の弱みを早々に露見させるなんてまだまだ拙い限りだな。
「こちらからの要求は三つ」
「なんだ」
「一つ、命と衣食住の保証。二つ、その後の自由。三つ、黙秘権の権利。これらを守ってくれれば君たちに危害を加えはしない」
「・・・随分と都合の良い条件だな」
「人一人の命に比べたら安いものじゃない?気が向けば君たちのために剣をふるってもいい」
「信じられん」
「まぁそうだろうね。それじゃこの人間が死ぬだけだ」
小さく「動かないで」とささやいて更に剣を突きつける。本当にギリギリまで剣を突きつけているから動かれると傷つけてしまう。頼む、恐怖で動かないでくれよ。顔にはあくどいと思われる笑みを浮かべつつ、内心冷や冷やしながら殺気を問答無用にぶつけてくる少年と向かい合っていた。
幸い、赤髪の少女は聡い子らしく、おとなしかった。助かった。マジデ。
「・・・」
仕方ない。
「君、その身なりと立ち振る舞い、王族だろ」
「・・・何が言いたい」
「王とはなんだろうか」
「・・・何が、言いたい」
「王の務めはなんだろうか?国を守ることか?それじゃあ国とは?玉座か?土地か?金か?」
「・・・」
「違うだろ」
「民だろ」
少年の目が見開かれる。少年といわず、居合わせた人間のほとんどが驚いたように、虚を突かれたかのように見開いている。よし、いける。この国は少なくともまともな思考で運営されているようだ。
これならもう少しだ。
「たった三つ守ればこの人間は助かるし、この三つさえ守れば何をされても構わないといっているんだ。自由とはいったが、監視をつけてもいい。それは構わない。むしろつけないほうが神経を疑うな」
「・・・」
「何を迷ってんの?一人の命を差し出して百人助かるなら、一人を差し出すべきだ。上に立つ者はそういうものさ。だが、ここは違う。わかるだろ?なぁ、高みの見物を決めてる上の人?」
「?!」
くるり、と右足を軸に回転して上を見上げれば、バルコニーの手すりに肘を乗せて緩く笑いながら見下ろしている男がいた。少年と似通った顔立ちから、兄弟だろう。なんとまぁ、食えない顔の男だ。
「へぇ・・・よく気づいたね」
「気配には敏感なもので。そこの木の上にいるヤツもそろそろ下げてもらえないかな」
「なんだ、ばれてたの」
ガサッ、と逆さになって黒髪短髪の男が姿を現した。そのことに場がざわついて、気づいていなかった人間へ朗らかに対応する。突き刺さる殺気が痛いままではあるが。
「お前は面白いな。ゼン、もういいよ。要求をのもう」
「お、ありがとー」
「ただし、君のいうように監視はつけさせてもらう。誰にするかはゼンに任せる」
「はい、兄上」
あとはよろしく。そう言い置いて男はバルコニーから姿を消した。ふーん、実権を握っているのはあの男らしい。通りで。
突き刺さる殺気が後々厄介そうだから、早々に赤髪の少女の手を放して少年たちの方へと押しやる。驚いた顔をして振り向いた少女には笑顔で手を振り、兵士に囲まれたまま口を開いた。
「自分は空っていうんだ。よろしくね」
さて、最低限は確保したがどうなることやら。
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