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赤髪の女の子を突き飛ばして距離を取ろうとしたけど、女の子が唇を噛みしめて勢いに逆らい、腕をつかんできたから驚いた。険しい顔した向こう側の少年の驚いた顔が見ものだった。自分もきっと同じような顔をしているのだろうが。
「怪我、してますよね!」
「え、あ、うん」
「脱いでください!応急処置します」
女の子の勢いに負けて促されるがままに腰を落として座り込み、団服を脱ぐ。途端に濃くなる血の臭いに痛ましそうに顔を歪める女の子は、「失礼します」とかいってタンクトップをずり上げた。傷に擦れて痛かったし、何より乾いて張り付いた布がべりべりと傷からはがされたのには参った。かなり痛かった。「いてぇ!!」とか叫ぶ傍らで「女だったのか?!」とか「あの傷で・・・ウソだろ」とか聞こえてきたけど痛みでそれどころではない。本気で痛い。
呻いていると、傷を観察して鋭く指示を出していた女の子に肩を押されて後ろへと寝かされた。背中には布の感触がある。見上げる形となった女の子の後ろには少年の顔が見えるあたり、これは少年が先ほどまで来ていた上着だろうか。いつの間に。
「止血と化膿止めを塗布します。少ししみるかと思いますが我慢してください」
そう真剣な顔をしてべたり、と塗っていく女の子。かなりしみた。でも痛覚が麻痺し始めているのか、思った以上に痛みはなかった。
視界が掠れてきているし、血を流しすぎたか。身の安全は保障されているし、もういいかな。
「悪い、あと、頼んだ」
それだけいって視界も思考もブラックアウトした。
***
突き飛ばされた腕をつかんで空と名乗ったその人を引き寄せればきょとん、とした幼い顔で見つめられた。戦っているときの表情とのあまりの差に驚いたけど、まずそんなことより、と焦ったように傷を見せろといえばおとなしくしたがってくれる素直な人だった。驚いたままだったから、ただ単に頭が回ってなかったからかもしれないけれど。
まずは傷の具合をみないと、と服を抜いてでもらったら女の子だったことにまず驚き、あまりの傷の具合にさらに驚いた。新しいものから、古いものまで、たくさんの傷がある。こんな状態であんな大立ち回りしていたのか。そしてなにより、私とそう変わらない年齢の女の子が、こんなに傷を負っているのか。
ぐっ、と眉を寄せてゼンへと振り返った。
「ミツヒデにリュウを呼びに行かせた。直接戦ったから傷の具合も大体は見当がついているだろう」
「そう、ならよかった。あと木々さんに薬室長へ状況説明にいってもらっていいかな?これは少し、危ないと思う」
「わかった。木々」
「聞いてたよ、行ってくる」
「ありがとうございます」
木々さんの言葉に礼を返しながら空さんへと向き直る。相当痛いらしく、まだ呻いている。ざっと全体を見て、また顔を歪めた。
「ゼン」
「あぁ」
私の言いたいことがわかったのか、バサ、と上着を脱いで空さんの後ろへとひいてくれる。顔をみれば「この方がてってりばやい」といって近くの兵士さんのマントも貸すように指示をだしていた。
ありがと、とだけ返して空さんの肩を押す。一切の抵抗もなく、後ろへと傾く空さんをゼンと一緒に支えて、ゆっくりと寝かせた。丁度持ち合わせていた薬の中から止血剤と化膿止め、常備している清潔な布を取り出し、まずは血をきれいに拭っていく。消毒液があればいいけど、仕方ない。とりあえず傷のひどい、まだ血が止まっていない傷に塗布していかなければ。
一言言い置いて、薬を塗りこんでいく。痛みからかビクッと反応されたけど、それも最初だけであとはなされるがままだった。結構しみるはずなんだけどな、と反応の少なさに空さんの顔をみれば視点が定まらず、ぼんやりとしていた。顔色も青い、を通り越して白い。これは、やばいかもしれない。血を流しすぎている。ギリ、と奥歯が鳴った。
「悪い、あと、頼んだ」
このあとどうするかリュウと相談しないと、と思考を巡らせているとそんな声が聞こえてきた。思った以上にはっきりとした声。ばっと顔をあげれば目を閉じ、動かなくなった空さんがいた。一瞬で血の気が下がるが、胸が上下している。呼吸はしている。そのことにほっと息をつき、遠くから聞こえるミツヒデさんとリュウの声に安堵した。
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思った以上に状態は悪いですよ。すすまねぇ。
「怪我、してますよね!」
「え、あ、うん」
「脱いでください!応急処置します」
女の子の勢いに負けて促されるがままに腰を落として座り込み、団服を脱ぐ。途端に濃くなる血の臭いに痛ましそうに顔を歪める女の子は、「失礼します」とかいってタンクトップをずり上げた。傷に擦れて痛かったし、何より乾いて張り付いた布がべりべりと傷からはがされたのには参った。かなり痛かった。「いてぇ!!」とか叫ぶ傍らで「女だったのか?!」とか「あの傷で・・・ウソだろ」とか聞こえてきたけど痛みでそれどころではない。本気で痛い。
呻いていると、傷を観察して鋭く指示を出していた女の子に肩を押されて後ろへと寝かされた。背中には布の感触がある。見上げる形となった女の子の後ろには少年の顔が見えるあたり、これは少年が先ほどまで来ていた上着だろうか。いつの間に。
「止血と化膿止めを塗布します。少ししみるかと思いますが我慢してください」
そう真剣な顔をしてべたり、と塗っていく女の子。かなりしみた。でも痛覚が麻痺し始めているのか、思った以上に痛みはなかった。
視界が掠れてきているし、血を流しすぎたか。身の安全は保障されているし、もういいかな。
「悪い、あと、頼んだ」
それだけいって視界も思考もブラックアウトした。
***
突き飛ばされた腕をつかんで空と名乗ったその人を引き寄せればきょとん、とした幼い顔で見つめられた。戦っているときの表情とのあまりの差に驚いたけど、まずそんなことより、と焦ったように傷を見せろといえばおとなしくしたがってくれる素直な人だった。驚いたままだったから、ただ単に頭が回ってなかったからかもしれないけれど。
まずは傷の具合をみないと、と服を抜いてでもらったら女の子だったことにまず驚き、あまりの傷の具合にさらに驚いた。新しいものから、古いものまで、たくさんの傷がある。こんな状態であんな大立ち回りしていたのか。そしてなにより、私とそう変わらない年齢の女の子が、こんなに傷を負っているのか。
ぐっ、と眉を寄せてゼンへと振り返った。
「ミツヒデにリュウを呼びに行かせた。直接戦ったから傷の具合も大体は見当がついているだろう」
「そう、ならよかった。あと木々さんに薬室長へ状況説明にいってもらっていいかな?これは少し、危ないと思う」
「わかった。木々」
「聞いてたよ、行ってくる」
「ありがとうございます」
木々さんの言葉に礼を返しながら空さんへと向き直る。相当痛いらしく、まだ呻いている。ざっと全体を見て、また顔を歪めた。
「ゼン」
「あぁ」
私の言いたいことがわかったのか、バサ、と上着を脱いで空さんの後ろへとひいてくれる。顔をみれば「この方がてってりばやい」といって近くの兵士さんのマントも貸すように指示をだしていた。
ありがと、とだけ返して空さんの肩を押す。一切の抵抗もなく、後ろへと傾く空さんをゼンと一緒に支えて、ゆっくりと寝かせた。丁度持ち合わせていた薬の中から止血剤と化膿止め、常備している清潔な布を取り出し、まずは血をきれいに拭っていく。消毒液があればいいけど、仕方ない。とりあえず傷のひどい、まだ血が止まっていない傷に塗布していかなければ。
一言言い置いて、薬を塗りこんでいく。痛みからかビクッと反応されたけど、それも最初だけであとはなされるがままだった。結構しみるはずなんだけどな、と反応の少なさに空さんの顔をみれば視点が定まらず、ぼんやりとしていた。顔色も青い、を通り越して白い。これは、やばいかもしれない。血を流しすぎている。ギリ、と奥歯が鳴った。
「悪い、あと、頼んだ」
このあとどうするかリュウと相談しないと、と思考を巡らせているとそんな声が聞こえてきた。思った以上にはっきりとした声。ばっと顔をあげれば目を閉じ、動かなくなった空さんがいた。一瞬で血の気が下がるが、胸が上下している。呼吸はしている。そのことにほっと息をつき、遠くから聞こえるミツヒデさんとリュウの声に安堵した。
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思った以上に状態は悪いですよ。すすまねぇ。
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