×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
帝光中学校。
今度自分が入学する学校らしい。帝光。へぇ、帝光。うん、聞き覚えがありすぎて頭痛がする。
「空?大丈夫か?」
「あ、はい、大丈夫、うん」
つい敬語になってしまうのを抑えて気を使ってくれた「父親」にへらり、と笑う。確かにこの「父親」は自分の父親ではあるが、大変申し訳ないことに自分が記憶している「父親」と異なるため、どうも敬語を使ってしまいそうになり困る。最初から敬語キャラでいければよかったのだが、自分の口調はそうじゃないためごまかしがきかない。
転生なんて面倒なものだ。
「帝光ってバスケの強いところでしょ?進学する学校はできればバスケできる学校がいいって確かに相談したけど、まさか帝光の名前が上がるとは思ってなかったからびっくりしただけだよ」
「そうか」
「うん。帝光中か、そうだね、行ってみたい、けど受験が気になるなぁ」
「なに、お前の学力なら大丈夫だろう」
「そうかなー・・・。チャリ通できる中学近くにあるし、そこでもいいとは思うんだけど」
「お前が数少ないわがままだからな、思いっきりさせてやりたいのさ」
「ありがたいけど私立じゃん」
「子供がそんなところ気にするな。相変わらずお前は謙虚だな」
はっはっは、と笑う父親に苦笑する。気にするよ、自分は「この体」の人生をつぶしたのだから。
本当、厄介。
「とりあえず受けてみなさい」
「はい、ありがとう、・・・お父さん」
ごめんなさい、ありがとう。
***
入学式が終わる。真新しい制服と胸の祝いの花がまぶしい。
今日、自分は帝光中学校に入学する。
何校か試験を受け見事全部受かったわけだが、自分的にはその中の他の公立中に行きたかった。もちろん父親にはそう訴えたが父親は帝光中をごり押ししたために帝光となった。やはり弱いのだ、「親」には。
白いブレザーが目に痛い。あぁ、何故帝光なんだ。ここは普通の世界だと安心していたのに。あぁ。モロすぎて嫌だ。こんなことになるならバスケなんてしなければよかった。いや、バスケ好きだからやりたかったんだけども。あーもう。
なんでまた漫画の世界とかそういう世界なの。
「っと、ごめんなさい」
つらつらと恨み節を考えてながらぼんやりと帰り道を歩いていると、誰かとぶつかった。知らず知らずのうちに俯いて歩いていてしまったらしく、完全に自分の前方不注意だ。あわてて顔をあげて謝る。そして、硬直。
「いえ、僕もぼんやりとしていました。すみません」
「・・・イエ」
あああああああまじかよ!!!!!!
「・・・?ぼんやりとして、どうかしましたか?」
「あ、いえ、大丈夫です。君も、怪我とかありませんか?」
「えぇ、大丈夫です」
とっさに答えて表情を作る。背中の冷や汗がやばい。しょっぱなからこれだなんて、先が思いやられる。いや。、いままでも経験からするに、自分は巻き込まれやすい。何故か、そういう運命線、とでもいうのだろうか。そう、物語の渦中に放り込まれる確率が高い。どこぞのお姉さまのせいで。
だから主人公の黒子テツヤに鉢合わせるだなんて、そう、想定はしていた。しかし時期が早い!!!!
「それはよかった、です」
「君も怪我はなさそうですね。ぶつかってしまいすみませんでした」
「いえいえ、こちらこそ。では」
「えぇ、では」
何事もなく別れる。別れられた。よかった。黒子っちはそういうキャラだものね!よし、このまま避けて避けて平凡に生きよう。それが、良い。
そうやって、生きたい。
***
「スターティングメンバーは、」
監督の言葉を聞きながらボールを持ち直す。隣にいるチームメイトには「死んだ魚の目をしてるけど大丈夫?」だなんていわれるけど、「大丈夫」とは返したけれど、あぁ、ほんと、もう、どうしてこうなった。
「最後は高野。ホジションはSG。外からばんばん打ってけ」
「はい」
「今回の一年生は強い子たちがそろっているが、強ければ強いほど丁度いい。男子と女子では差があるだろうが、勉強するところはたくさんある。存分に盗んで来い」
『はい!』
みんなの声がそろう。女子はスポ根だよなぁ、なんて思いつつ、男女バスケ部の練習試合という事実に泣きそうになった。なにそれ、知らない。名物だなんて、知らないよ。そもそもなんで自分がスタメンなのかさえよくわからない。
入部して半年。まだ半年だぞ、半年。
あぁ、まじで、本当に、
「男子バスケ部対女子バスケ部の練習試合をはじめます!」
どうしてこうなった!!!!
「一同、礼!」
むなしく笛の音が鳴り響いた。
***
「君はスタメンででてたSGの子だろう」
男子には圧倒的に負け、部室で着替えながら軽く反省会をした後の、のんびり一人で帰ろうとした時だ。
声をかけられた。何事、と振り返れば赤い髪をした少年が紫と緑と青とを引き連れて立っていた。おぉ・・・なんて色とりどりなんだ。
「あれー?どうしたのー?」
「あっ、いや、ちょっと驚いただけ、です」
「あ?なんでだよ?声かけただけだろ?」
「青峰、これ以上怖がらせてどうする。一般女子からすればこんな図体のでかい男にそろって声をかけられれば驚くのだよ」
「そういうことだ。さて、いきなりすまないね」
「いえ、」
ほんとだよ!!なんだんなだよ!!!お前らでかくてびびるんだっての!!!しかも関わりたくないんだよ!!!!オヤコロとザリガニ蝉とんまい棒とツンデレ変人とがそろいもそろってなんの用なんだよ!!!早く返してくれよ帰りたいんだよ疲れてるんだよお前らに叩き潰されたからな!!!
「君は今日、とてもいい熟練された動きをしていたね。ついこの間まで小学生だったとは思えない」
「あ、ありがとうございます」
「ミニバスでもやっていたのかな?」
「はい、まぁ・・・物心つくごろには、バスケやってました」
「お、俺と一緒だな!」
「そ、そうなんですね」
にかっと笑うピュア峰がまぶしい。
「・・・それにしても、3Pを打ちなれていたな。ミニバスでは3Pなどなかっただろう?」
「そりゃ半年、打ち続けていたので・・・」
「それはうちの緑間も同じだ。でも、それ以上の慣れを君に感じた」
早く解放してくれないかなーなんて思っているところに、赤司が鋭い目で痛いところをついてきた。「あー・・・」とつぶやきながら目を泳がせる。困った。前世でバスケをたしなんでいたから、なんて言えるはずもない。どう誤魔化したものか。鋭すぎるだろう、赤司。
「練習量が違うから、じゃないですか」
「緑間以上に練習しているやつなんかそうそういねぇぞ」
「あー・・・練習量というか、年数?が違う、的な」
「それってどういうことー?」
あーもうめんどくせぇな!
「・・・昔から、バスケの試合とかを、テレビでよく見てて。3Pもそれで知って。自分はフィジカルもPGもする器用さもないから、3Pでがんばろうって、小学生のときから練習してたんです」
「・・・なるほど、それで年数、というわけか」
赤司の痛すぎる視線を受けながらしどろもどろに話してみると、思いのほか及第点をいただけたようだ。一応は納得してくれたようで、ほかの人たちも「それでかー」とかいろいろ言葉をもらしている。
「君は特に秀でたところも目立った才能もないが、努力は素晴らしい」
アッハハハハ、耳に痛いですねー。
「俺たちは男子と女子だが同じバスケをプレイする者同士、仲良くしてほしい」
「あ、はい、光栄です、ありがとうございます」
どうやら気に入られたようで、へらりと笑い返しながら差し出された手を握った。仲良くしなければならないらしい。
あー困ったな。これは。ほんと困った。関わりたくなかったのに・・・。
どうすっかなーと考えながらするりと握った手を放そうとして、またぎゅっと握られた。
「隠していることも、いつか教えてくれると嬉しいね」
こっそりと。もう帰ろうとしている後ろのみんなには気づかれないように、自分にだけ聞こえるようにそうつぶやいた。
笑顔で。
「え?」
目を丸くして、本当に心の底から疑問そうに、そう返してやった。一切反応してやるものか。動揺なんて悟らせない。こちとらお前らより長く生きてきたんだぞ!!
「・・・いや、なんでもない。俺の気のせいだったようだ」
ではまた。なんて別れた。
ほんともう、魔王だよあいつ。
(最後ダレたけど勘弁。)
今度自分が入学する学校らしい。帝光。へぇ、帝光。うん、聞き覚えがありすぎて頭痛がする。
「空?大丈夫か?」
「あ、はい、大丈夫、うん」
つい敬語になってしまうのを抑えて気を使ってくれた「父親」にへらり、と笑う。確かにこの「父親」は自分の父親ではあるが、大変申し訳ないことに自分が記憶している「父親」と異なるため、どうも敬語を使ってしまいそうになり困る。最初から敬語キャラでいければよかったのだが、自分の口調はそうじゃないためごまかしがきかない。
転生なんて面倒なものだ。
「帝光ってバスケの強いところでしょ?進学する学校はできればバスケできる学校がいいって確かに相談したけど、まさか帝光の名前が上がるとは思ってなかったからびっくりしただけだよ」
「そうか」
「うん。帝光中か、そうだね、行ってみたい、けど受験が気になるなぁ」
「なに、お前の学力なら大丈夫だろう」
「そうかなー・・・。チャリ通できる中学近くにあるし、そこでもいいとは思うんだけど」
「お前が数少ないわがままだからな、思いっきりさせてやりたいのさ」
「ありがたいけど私立じゃん」
「子供がそんなところ気にするな。相変わらずお前は謙虚だな」
はっはっは、と笑う父親に苦笑する。気にするよ、自分は「この体」の人生をつぶしたのだから。
本当、厄介。
「とりあえず受けてみなさい」
「はい、ありがとう、・・・お父さん」
ごめんなさい、ありがとう。
***
入学式が終わる。真新しい制服と胸の祝いの花がまぶしい。
今日、自分は帝光中学校に入学する。
何校か試験を受け見事全部受かったわけだが、自分的にはその中の他の公立中に行きたかった。もちろん父親にはそう訴えたが父親は帝光中をごり押ししたために帝光となった。やはり弱いのだ、「親」には。
白いブレザーが目に痛い。あぁ、何故帝光なんだ。ここは普通の世界だと安心していたのに。あぁ。モロすぎて嫌だ。こんなことになるならバスケなんてしなければよかった。いや、バスケ好きだからやりたかったんだけども。あーもう。
なんでまた漫画の世界とかそういう世界なの。
「っと、ごめんなさい」
つらつらと恨み節を考えてながらぼんやりと帰り道を歩いていると、誰かとぶつかった。知らず知らずのうちに俯いて歩いていてしまったらしく、完全に自分の前方不注意だ。あわてて顔をあげて謝る。そして、硬直。
「いえ、僕もぼんやりとしていました。すみません」
「・・・イエ」
あああああああまじかよ!!!!!!
「・・・?ぼんやりとして、どうかしましたか?」
「あ、いえ、大丈夫です。君も、怪我とかありませんか?」
「えぇ、大丈夫です」
とっさに答えて表情を作る。背中の冷や汗がやばい。しょっぱなからこれだなんて、先が思いやられる。いや。、いままでも経験からするに、自分は巻き込まれやすい。何故か、そういう運命線、とでもいうのだろうか。そう、物語の渦中に放り込まれる確率が高い。どこぞのお姉さまのせいで。
だから主人公の黒子テツヤに鉢合わせるだなんて、そう、想定はしていた。しかし時期が早い!!!!
「それはよかった、です」
「君も怪我はなさそうですね。ぶつかってしまいすみませんでした」
「いえいえ、こちらこそ。では」
「えぇ、では」
何事もなく別れる。別れられた。よかった。黒子っちはそういうキャラだものね!よし、このまま避けて避けて平凡に生きよう。それが、良い。
そうやって、生きたい。
***
「スターティングメンバーは、」
監督の言葉を聞きながらボールを持ち直す。隣にいるチームメイトには「死んだ魚の目をしてるけど大丈夫?」だなんていわれるけど、「大丈夫」とは返したけれど、あぁ、ほんと、もう、どうしてこうなった。
「最後は高野。ホジションはSG。外からばんばん打ってけ」
「はい」
「今回の一年生は強い子たちがそろっているが、強ければ強いほど丁度いい。男子と女子では差があるだろうが、勉強するところはたくさんある。存分に盗んで来い」
『はい!』
みんなの声がそろう。女子はスポ根だよなぁ、なんて思いつつ、男女バスケ部の練習試合という事実に泣きそうになった。なにそれ、知らない。名物だなんて、知らないよ。そもそもなんで自分がスタメンなのかさえよくわからない。
入部して半年。まだ半年だぞ、半年。
あぁ、まじで、本当に、
「男子バスケ部対女子バスケ部の練習試合をはじめます!」
どうしてこうなった!!!!
「一同、礼!」
むなしく笛の音が鳴り響いた。
***
「君はスタメンででてたSGの子だろう」
男子には圧倒的に負け、部室で着替えながら軽く反省会をした後の、のんびり一人で帰ろうとした時だ。
声をかけられた。何事、と振り返れば赤い髪をした少年が紫と緑と青とを引き連れて立っていた。おぉ・・・なんて色とりどりなんだ。
「あれー?どうしたのー?」
「あっ、いや、ちょっと驚いただけ、です」
「あ?なんでだよ?声かけただけだろ?」
「青峰、これ以上怖がらせてどうする。一般女子からすればこんな図体のでかい男にそろって声をかけられれば驚くのだよ」
「そういうことだ。さて、いきなりすまないね」
「いえ、」
ほんとだよ!!なんだんなだよ!!!お前らでかくてびびるんだっての!!!しかも関わりたくないんだよ!!!!オヤコロとザリガニ蝉とんまい棒とツンデレ変人とがそろいもそろってなんの用なんだよ!!!早く返してくれよ帰りたいんだよ疲れてるんだよお前らに叩き潰されたからな!!!
「君は今日、とてもいい熟練された動きをしていたね。ついこの間まで小学生だったとは思えない」
「あ、ありがとうございます」
「ミニバスでもやっていたのかな?」
「はい、まぁ・・・物心つくごろには、バスケやってました」
「お、俺と一緒だな!」
「そ、そうなんですね」
にかっと笑うピュア峰がまぶしい。
「・・・それにしても、3Pを打ちなれていたな。ミニバスでは3Pなどなかっただろう?」
「そりゃ半年、打ち続けていたので・・・」
「それはうちの緑間も同じだ。でも、それ以上の慣れを君に感じた」
早く解放してくれないかなーなんて思っているところに、赤司が鋭い目で痛いところをついてきた。「あー・・・」とつぶやきながら目を泳がせる。困った。前世でバスケをたしなんでいたから、なんて言えるはずもない。どう誤魔化したものか。鋭すぎるだろう、赤司。
「練習量が違うから、じゃないですか」
「緑間以上に練習しているやつなんかそうそういねぇぞ」
「あー・・・練習量というか、年数?が違う、的な」
「それってどういうことー?」
あーもうめんどくせぇな!
「・・・昔から、バスケの試合とかを、テレビでよく見てて。3Pもそれで知って。自分はフィジカルもPGもする器用さもないから、3Pでがんばろうって、小学生のときから練習してたんです」
「・・・なるほど、それで年数、というわけか」
赤司の痛すぎる視線を受けながらしどろもどろに話してみると、思いのほか及第点をいただけたようだ。一応は納得してくれたようで、ほかの人たちも「それでかー」とかいろいろ言葉をもらしている。
「君は特に秀でたところも目立った才能もないが、努力は素晴らしい」
アッハハハハ、耳に痛いですねー。
「俺たちは男子と女子だが同じバスケをプレイする者同士、仲良くしてほしい」
「あ、はい、光栄です、ありがとうございます」
どうやら気に入られたようで、へらりと笑い返しながら差し出された手を握った。仲良くしなければならないらしい。
あー困ったな。これは。ほんと困った。関わりたくなかったのに・・・。
どうすっかなーと考えながらするりと握った手を放そうとして、またぎゅっと握られた。
「隠していることも、いつか教えてくれると嬉しいね」
こっそりと。もう帰ろうとしている後ろのみんなには気づかれないように、自分にだけ聞こえるようにそうつぶやいた。
笑顔で。
「え?」
目を丸くして、本当に心の底から疑問そうに、そう返してやった。一切反応してやるものか。動揺なんて悟らせない。こちとらお前らより長く生きてきたんだぞ!!
「・・・いや、なんでもない。俺の気のせいだったようだ」
ではまた。なんて別れた。
ほんともう、魔王だよあいつ。
(最後ダレたけど勘弁。)
PR
ほんともうあの子は!!!!(知ったような顔して)
バッドエンドなので、うちの子介入させようかなって思ってます。
すでに冒頭は書いたけどデータが会社なので(仕事中に目を盗んで書いていた)明日データ持ってきてちろっと投下しようかなって画策してます。加筆するから週末になるのかな。
ほんとあの子には幸せになってもらいたいです。マジデ。
うちの子そのためにがんばるよ。なんだってがんばるよ。だってだいすきだもの。
そんなこんなで落書きしてたらこんなのできたので投下しておきます。
夢絵、しかも拉致ってますのでスルー上等でお願いします。
バッドエンドなので、うちの子介入させようかなって思ってます。
すでに冒頭は書いたけどデータが会社なので(仕事中に目を盗んで書いていた)明日データ持ってきてちろっと投下しようかなって画策してます。加筆するから週末になるのかな。
ほんとあの子には幸せになってもらいたいです。マジデ。
うちの子そのためにがんばるよ。なんだってがんばるよ。だってだいすきだもの。
そんなこんなで落書きしてたらこんなのできたので投下しておきます。
夢絵、しかも拉致ってますのでスルー上等でお願いします。
赤髪の女の子を突き飛ばして距離を取ろうとしたけど、女の子が唇を噛みしめて勢いに逆らい、腕をつかんできたから驚いた。険しい顔した向こう側の少年の驚いた顔が見ものだった。自分もきっと同じような顔をしているのだろうが。
「怪我、してますよね!」
「え、あ、うん」
「脱いでください!応急処置します」
女の子の勢いに負けて促されるがままに腰を落として座り込み、団服を脱ぐ。途端に濃くなる血の臭いに痛ましそうに顔を歪める女の子は、「失礼します」とかいってタンクトップをずり上げた。傷に擦れて痛かったし、何より乾いて張り付いた布がべりべりと傷からはがされたのには参った。かなり痛かった。「いてぇ!!」とか叫ぶ傍らで「女だったのか?!」とか「あの傷で・・・ウソだろ」とか聞こえてきたけど痛みでそれどころではない。本気で痛い。
呻いていると、傷を観察して鋭く指示を出していた女の子に肩を押されて後ろへと寝かされた。背中には布の感触がある。見上げる形となった女の子の後ろには少年の顔が見えるあたり、これは少年が先ほどまで来ていた上着だろうか。いつの間に。
「止血と化膿止めを塗布します。少ししみるかと思いますが我慢してください」
そう真剣な顔をしてべたり、と塗っていく女の子。かなりしみた。でも痛覚が麻痺し始めているのか、思った以上に痛みはなかった。
視界が掠れてきているし、血を流しすぎたか。身の安全は保障されているし、もういいかな。
「悪い、あと、頼んだ」
それだけいって視界も思考もブラックアウトした。
***
突き飛ばされた腕をつかんで空と名乗ったその人を引き寄せればきょとん、とした幼い顔で見つめられた。戦っているときの表情とのあまりの差に驚いたけど、まずそんなことより、と焦ったように傷を見せろといえばおとなしくしたがってくれる素直な人だった。驚いたままだったから、ただ単に頭が回ってなかったからかもしれないけれど。
まずは傷の具合をみないと、と服を抜いてでもらったら女の子だったことにまず驚き、あまりの傷の具合にさらに驚いた。新しいものから、古いものまで、たくさんの傷がある。こんな状態であんな大立ち回りしていたのか。そしてなにより、私とそう変わらない年齢の女の子が、こんなに傷を負っているのか。
ぐっ、と眉を寄せてゼンへと振り返った。
「ミツヒデにリュウを呼びに行かせた。直接戦ったから傷の具合も大体は見当がついているだろう」
「そう、ならよかった。あと木々さんに薬室長へ状況説明にいってもらっていいかな?これは少し、危ないと思う」
「わかった。木々」
「聞いてたよ、行ってくる」
「ありがとうございます」
木々さんの言葉に礼を返しながら空さんへと向き直る。相当痛いらしく、まだ呻いている。ざっと全体を見て、また顔を歪めた。
「ゼン」
「あぁ」
私の言いたいことがわかったのか、バサ、と上着を脱いで空さんの後ろへとひいてくれる。顔をみれば「この方がてってりばやい」といって近くの兵士さんのマントも貸すように指示をだしていた。
ありがと、とだけ返して空さんの肩を押す。一切の抵抗もなく、後ろへと傾く空さんをゼンと一緒に支えて、ゆっくりと寝かせた。丁度持ち合わせていた薬の中から止血剤と化膿止め、常備している清潔な布を取り出し、まずは血をきれいに拭っていく。消毒液があればいいけど、仕方ない。とりあえず傷のひどい、まだ血が止まっていない傷に塗布していかなければ。
一言言い置いて、薬を塗りこんでいく。痛みからかビクッと反応されたけど、それも最初だけであとはなされるがままだった。結構しみるはずなんだけどな、と反応の少なさに空さんの顔をみれば視点が定まらず、ぼんやりとしていた。顔色も青い、を通り越して白い。これは、やばいかもしれない。血を流しすぎている。ギリ、と奥歯が鳴った。
「悪い、あと、頼んだ」
このあとどうするかリュウと相談しないと、と思考を巡らせているとそんな声が聞こえてきた。思った以上にはっきりとした声。ばっと顔をあげれば目を閉じ、動かなくなった空さんがいた。一瞬で血の気が下がるが、胸が上下している。呼吸はしている。そのことにほっと息をつき、遠くから聞こえるミツヒデさんとリュウの声に安堵した。
------------------------
思った以上に状態は悪いですよ。すすまねぇ。
「怪我、してますよね!」
「え、あ、うん」
「脱いでください!応急処置します」
女の子の勢いに負けて促されるがままに腰を落として座り込み、団服を脱ぐ。途端に濃くなる血の臭いに痛ましそうに顔を歪める女の子は、「失礼します」とかいってタンクトップをずり上げた。傷に擦れて痛かったし、何より乾いて張り付いた布がべりべりと傷からはがされたのには参った。かなり痛かった。「いてぇ!!」とか叫ぶ傍らで「女だったのか?!」とか「あの傷で・・・ウソだろ」とか聞こえてきたけど痛みでそれどころではない。本気で痛い。
呻いていると、傷を観察して鋭く指示を出していた女の子に肩を押されて後ろへと寝かされた。背中には布の感触がある。見上げる形となった女の子の後ろには少年の顔が見えるあたり、これは少年が先ほどまで来ていた上着だろうか。いつの間に。
「止血と化膿止めを塗布します。少ししみるかと思いますが我慢してください」
そう真剣な顔をしてべたり、と塗っていく女の子。かなりしみた。でも痛覚が麻痺し始めているのか、思った以上に痛みはなかった。
視界が掠れてきているし、血を流しすぎたか。身の安全は保障されているし、もういいかな。
「悪い、あと、頼んだ」
それだけいって視界も思考もブラックアウトした。
***
突き飛ばされた腕をつかんで空と名乗ったその人を引き寄せればきょとん、とした幼い顔で見つめられた。戦っているときの表情とのあまりの差に驚いたけど、まずそんなことより、と焦ったように傷を見せろといえばおとなしくしたがってくれる素直な人だった。驚いたままだったから、ただ単に頭が回ってなかったからかもしれないけれど。
まずは傷の具合をみないと、と服を抜いてでもらったら女の子だったことにまず驚き、あまりの傷の具合にさらに驚いた。新しいものから、古いものまで、たくさんの傷がある。こんな状態であんな大立ち回りしていたのか。そしてなにより、私とそう変わらない年齢の女の子が、こんなに傷を負っているのか。
ぐっ、と眉を寄せてゼンへと振り返った。
「ミツヒデにリュウを呼びに行かせた。直接戦ったから傷の具合も大体は見当がついているだろう」
「そう、ならよかった。あと木々さんに薬室長へ状況説明にいってもらっていいかな?これは少し、危ないと思う」
「わかった。木々」
「聞いてたよ、行ってくる」
「ありがとうございます」
木々さんの言葉に礼を返しながら空さんへと向き直る。相当痛いらしく、まだ呻いている。ざっと全体を見て、また顔を歪めた。
「ゼン」
「あぁ」
私の言いたいことがわかったのか、バサ、と上着を脱いで空さんの後ろへとひいてくれる。顔をみれば「この方がてってりばやい」といって近くの兵士さんのマントも貸すように指示をだしていた。
ありがと、とだけ返して空さんの肩を押す。一切の抵抗もなく、後ろへと傾く空さんをゼンと一緒に支えて、ゆっくりと寝かせた。丁度持ち合わせていた薬の中から止血剤と化膿止め、常備している清潔な布を取り出し、まずは血をきれいに拭っていく。消毒液があればいいけど、仕方ない。とりあえず傷のひどい、まだ血が止まっていない傷に塗布していかなければ。
一言言い置いて、薬を塗りこんでいく。痛みからかビクッと反応されたけど、それも最初だけであとはなされるがままだった。結構しみるはずなんだけどな、と反応の少なさに空さんの顔をみれば視点が定まらず、ぼんやりとしていた。顔色も青い、を通り越して白い。これは、やばいかもしれない。血を流しすぎている。ギリ、と奥歯が鳴った。
「悪い、あと、頼んだ」
このあとどうするかリュウと相談しないと、と思考を巡らせているとそんな声が聞こえてきた。思った以上にはっきりとした声。ばっと顔をあげれば目を閉じ、動かなくなった空さんがいた。一瞬で血の気が下がるが、胸が上下している。呼吸はしている。そのことにほっと息をつき、遠くから聞こえるミツヒデさんとリュウの声に安堵した。
------------------------
思った以上に状態は悪いですよ。すすまねぇ。
ぼんやりしてたら畳むの忘れて書いちゃったからこのまま日記で書いていこうかなって思った次第です。
赤髪の白雪姫、きてます。少女マンガすきなんだよー!!!
赤髪の白雪姫、きてます。少女マンガすきなんだよー!!!
負っている傷が痛む。傷の具合からして長くは持たない。短期決戦で行かせてもらおう。
そう冷静に判断し、とった行動はなかなかに最悪な行動だった。
「動くな!!」
近くにいた非戦闘要員の腕を捻って後ろで掴んで叫べば、面白いくらいに全員の動きが止まった。特にあの毅然とした態度で問いかけてきた少年のうろたえっぷりが中々に傑作だ。なるほど、あの少年のいい人か、この赤髪の御嬢さんは。
表面上、冷静な態度を保っているが、まだまだ修行不足といったところだろう。鋭い者にはバレバレである。まぁ自分の好きな人が人質にとられるというシチュエーションでは、うまく冷静にふるまえてはいるとは思うがな。
「さて、君たちに紳士的な態度を要求しようかな」
「人質を取っておいて紳士的に、とは無茶をいうな」
「こちらからすれば正当防衛ですよ?」
隙を狙いつつも鼻で笑う少年ににっこりとほほ笑んで、赤髪の少女の首元に怪我をしないように、しかし遠目からはギリギリまで押し当てているかのように突きつける。ほら、顔色が変わった。
自分の弱みを早々に露見させるなんてまだまだ拙い限りだな。
「こちらからの要求は三つ」
「なんだ」
「一つ、命と衣食住の保証。二つ、その後の自由。三つ、黙秘権の権利。これらを守ってくれれば君たちに危害を加えはしない」
「・・・随分と都合の良い条件だな」
「人一人の命に比べたら安いものじゃない?気が向けば君たちのために剣をふるってもいい」
「信じられん」
「まぁそうだろうね。それじゃこの人間が死ぬだけだ」
小さく「動かないで」とささやいて更に剣を突きつける。本当にギリギリまで剣を突きつけているから動かれると傷つけてしまう。頼む、恐怖で動かないでくれよ。顔にはあくどいと思われる笑みを浮かべつつ、内心冷や冷やしながら殺気を問答無用にぶつけてくる少年と向かい合っていた。
幸い、赤髪の少女は聡い子らしく、おとなしかった。助かった。マジデ。
「・・・」
仕方ない。
「君、その身なりと立ち振る舞い、王族だろ」
「・・・何が言いたい」
「王とはなんだろうか」
「・・・何が、言いたい」
「王の務めはなんだろうか?国を守ることか?それじゃあ国とは?玉座か?土地か?金か?」
「・・・」
「違うだろ」
「民だろ」
少年の目が見開かれる。少年といわず、居合わせた人間のほとんどが驚いたように、虚を突かれたかのように見開いている。よし、いける。この国は少なくともまともな思考で運営されているようだ。
これならもう少しだ。
「たった三つ守ればこの人間は助かるし、この三つさえ守れば何をされても構わないといっているんだ。自由とはいったが、監視をつけてもいい。それは構わない。むしろつけないほうが神経を疑うな」
「・・・」
「何を迷ってんの?一人の命を差し出して百人助かるなら、一人を差し出すべきだ。上に立つ者はそういうものさ。だが、ここは違う。わかるだろ?なぁ、高みの見物を決めてる上の人?」
「?!」
くるり、と右足を軸に回転して上を見上げれば、バルコニーの手すりに肘を乗せて緩く笑いながら見下ろしている男がいた。少年と似通った顔立ちから、兄弟だろう。なんとまぁ、食えない顔の男だ。
「へぇ・・・よく気づいたね」
「気配には敏感なもので。そこの木の上にいるヤツもそろそろ下げてもらえないかな」
「なんだ、ばれてたの」
ガサッ、と逆さになって黒髪短髪の男が姿を現した。そのことに場がざわついて、気づいていなかった人間へ朗らかに対応する。突き刺さる殺気が痛いままではあるが。
「お前は面白いな。ゼン、もういいよ。要求をのもう」
「お、ありがとー」
「ただし、君のいうように監視はつけさせてもらう。誰にするかはゼンに任せる」
「はい、兄上」
あとはよろしく。そう言い置いて男はバルコニーから姿を消した。ふーん、実権を握っているのはあの男らしい。通りで。
突き刺さる殺気が後々厄介そうだから、早々に赤髪の少女の手を放して少年たちの方へと押しやる。驚いた顔をして振り向いた少女には笑顔で手を振り、兵士に囲まれたまま口を開いた。
「自分は空っていうんだ。よろしくね」
さて、最低限は確保したがどうなることやら。
そう冷静に判断し、とった行動はなかなかに最悪な行動だった。
「動くな!!」
近くにいた非戦闘要員の腕を捻って後ろで掴んで叫べば、面白いくらいに全員の動きが止まった。特にあの毅然とした態度で問いかけてきた少年のうろたえっぷりが中々に傑作だ。なるほど、あの少年のいい人か、この赤髪の御嬢さんは。
表面上、冷静な態度を保っているが、まだまだ修行不足といったところだろう。鋭い者にはバレバレである。まぁ自分の好きな人が人質にとられるというシチュエーションでは、うまく冷静にふるまえてはいるとは思うがな。
「さて、君たちに紳士的な態度を要求しようかな」
「人質を取っておいて紳士的に、とは無茶をいうな」
「こちらからすれば正当防衛ですよ?」
隙を狙いつつも鼻で笑う少年ににっこりとほほ笑んで、赤髪の少女の首元に怪我をしないように、しかし遠目からはギリギリまで押し当てているかのように突きつける。ほら、顔色が変わった。
自分の弱みを早々に露見させるなんてまだまだ拙い限りだな。
「こちらからの要求は三つ」
「なんだ」
「一つ、命と衣食住の保証。二つ、その後の自由。三つ、黙秘権の権利。これらを守ってくれれば君たちに危害を加えはしない」
「・・・随分と都合の良い条件だな」
「人一人の命に比べたら安いものじゃない?気が向けば君たちのために剣をふるってもいい」
「信じられん」
「まぁそうだろうね。それじゃこの人間が死ぬだけだ」
小さく「動かないで」とささやいて更に剣を突きつける。本当にギリギリまで剣を突きつけているから動かれると傷つけてしまう。頼む、恐怖で動かないでくれよ。顔にはあくどいと思われる笑みを浮かべつつ、内心冷や冷やしながら殺気を問答無用にぶつけてくる少年と向かい合っていた。
幸い、赤髪の少女は聡い子らしく、おとなしかった。助かった。マジデ。
「・・・」
仕方ない。
「君、その身なりと立ち振る舞い、王族だろ」
「・・・何が言いたい」
「王とはなんだろうか」
「・・・何が、言いたい」
「王の務めはなんだろうか?国を守ることか?それじゃあ国とは?玉座か?土地か?金か?」
「・・・」
「違うだろ」
「民だろ」
少年の目が見開かれる。少年といわず、居合わせた人間のほとんどが驚いたように、虚を突かれたかのように見開いている。よし、いける。この国は少なくともまともな思考で運営されているようだ。
これならもう少しだ。
「たった三つ守ればこの人間は助かるし、この三つさえ守れば何をされても構わないといっているんだ。自由とはいったが、監視をつけてもいい。それは構わない。むしろつけないほうが神経を疑うな」
「・・・」
「何を迷ってんの?一人の命を差し出して百人助かるなら、一人を差し出すべきだ。上に立つ者はそういうものさ。だが、ここは違う。わかるだろ?なぁ、高みの見物を決めてる上の人?」
「?!」
くるり、と右足を軸に回転して上を見上げれば、バルコニーの手すりに肘を乗せて緩く笑いながら見下ろしている男がいた。少年と似通った顔立ちから、兄弟だろう。なんとまぁ、食えない顔の男だ。
「へぇ・・・よく気づいたね」
「気配には敏感なもので。そこの木の上にいるヤツもそろそろ下げてもらえないかな」
「なんだ、ばれてたの」
ガサッ、と逆さになって黒髪短髪の男が姿を現した。そのことに場がざわついて、気づいていなかった人間へ朗らかに対応する。突き刺さる殺気が痛いままではあるが。
「お前は面白いな。ゼン、もういいよ。要求をのもう」
「お、ありがとー」
「ただし、君のいうように監視はつけさせてもらう。誰にするかはゼンに任せる」
「はい、兄上」
あとはよろしく。そう言い置いて男はバルコニーから姿を消した。ふーん、実権を握っているのはあの男らしい。通りで。
突き刺さる殺気が後々厄介そうだから、早々に赤髪の少女の手を放して少年たちの方へと押しやる。驚いた顔をして振り向いた少女には笑顔で手を振り、兵士に囲まれたまま口を開いた。
「自分は空っていうんだ。よろしくね」
さて、最低限は確保したがどうなることやら。