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ふらっと徒然に。
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ペダルネタを少々。
たぶん単発で終わります。
コラボの二人でちょっと百合百合しいかもしれない。

畳んでおくので自己責任でおねがいしまーす。



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 本丸は広い。刀剣男士は四十振り以上あるからか、大部屋から小部屋までたくさんの部屋が用意されている。政府から確認できる刀剣男士を揃えろと、暗に言われているようで、渋面を禁じ得ない。
 審神者の仕事は、刀剣男士を率いて、過去を修正しようとする"敵"を滅し、阻止することだ。そのためには、強い力が必要である。赴く戦場によっては、短刀や打刀、太刀や大太刀など、適正を考える必要もあるだろう。だから数が必要であるというのはわかる。わかるが、彼らを現代に召喚するということを、理解してなのだろうか。理解しているならば、軽々しく、刀剣男士を揃えろなどとはいえないはずだ。
 面と向かっての指令はないが、台所の充実度や部屋の多さ、設備の大きさなどを考えると、どうしても、せっつかれているように思えてならない。こんのすけはそんなことはないというが、彼は政府の手の者だ。どこまで信じたものかわからない。
「じゃあ、お願いしていい?」
 本丸は広い。任務は戦闘であるから、そっち方面もそれなりに充実している。
 その一つがここ、道場である。
「ねぇ、本当にするの?乱藤四郎さん」
 清光との手合せは、広い庭で行った。ゆくゆくは、ここも内番のために使用することになるだろう。あとは、洗濯物を干す場所とか。
 戦闘は野外であるし、できるだけ同じ状況で手合せをしておきたかったのだ。なにせ久しぶりだ。できれば一生、武器など手に持ちたくなかったが、まぁ仕方がない。
 初陣前に、ある程度慣れておかなければならない。地面に足を取られて転倒などすれば、そこで自分の命が刈り取られる可能性があるのだ。微々たるものだろうがなんだろうが、そうなる可能性が少しでもあるのなら、潰しておきたいのは普通だろう。そのうち、前線へでる回数も減っていくことだろうし、いま必要ないとも思っていた。そういうわけで、道場は締め切っていたのに。
 立つつもりなどなかったのに。
「……ねぇ、乱藤四郎さん」
「んっもう、往生際が悪いよ、主さん」
 ちゃき、と短刀の切っ先が向けられる。さらりとしたきれいな髪が揺れて、軍服を改造したかのような服装の、スカートが踏み出した振動で波打つ。頭に乗る軍帽は邪魔なのか、その鍔を掴んでひょいっと投げ捨てた。
 姿は美少女。
 しかし少年。
 目は獰猛だ。
 喰われそう。
「主」
 審判役として、乱藤四郎さんと自分の間に立つ清光が、至極不機嫌な声で呼んだ。諦めろ、とか、腹を括れ、とか、そういう意味じゃない。約束を破ったね?という意味合いだ。
 しかし、しかしだ。
 鍛刀で初めての刀剣男士である乱藤四郎は引かない。
 この子が顕現した際に、手に持っていた刀がいけないのか。
 自分が女であることがいけないのか。
 なんなのか。
 挨拶もそこそこに、彼は言い放ったのだ。
『ねぇ、主。僕と乱れよ?』
 なんつーことをいうんだこの刀剣男士は。
 絶句もいいところで、清光との口論で察するに、要は手合せしたいということらしい。が、それを許す清光じゃない。放心しているところをこんのすけに叩きおこされ、目の前の言い合いに口をはさめずに三十分ほど経過したのち、清光を丸め込んで手合せを受けたのだ。
 突き刺さる視線は仕方ない。仕方のないことではあるが、あのままでは平行線であったし、一応は納得させたのだ。強引ではあったが、どうしようもない。どうしようもないことなんだよ、清光。
 冷たい目の中にある傷ついた感情に、土下座したくなる。約束した直後の反故だ。清光の気持ちもわかるけれど、けれど。
 あとで目一杯、甘やかそう。
 そう決めて、構えた。
 清光は不機嫌そうに片手をあげる。乱藤四郎さんは嬉々として柄を握り直す。それにぴたり、と標準を合わせて、息を吐き出した。ゆっくりと瞬きをする。せっかく少しだけできた清光との信頼関係にひびを入れた彼には、痛い目を見てもらおう。
 すっと息を整えて意識を切り替えた瞬間に、清光の手が振り下ろされた。
「俺との手合せなんて必要あったの?」
 手入部屋へと乱藤四郎を押し込んで、治療し、眠らせたあとだ。夜も深く、月明かりがまぶしい中で各自の部屋へと戻ろうとしていた時に、後ろからついてくる清光がそういった。声は、なんとも平坦なもので、疑問に思うぐらいには感情がない。呆れたように振り返り、「当然、あるよ」と短く答えた。清光は無表情だ。
「でも、主は弱くないじゃない」
「弱いよ。少なくとも君よりは」
「あの後にはそうとは思えない」
 ぶっちぎりではないが、そこそこ優勢を保ったまま、乱藤四郎さんには勝った。自分もそれなりに怪我をしたし、乱藤四郎さんに至っては中傷だ。さすが刀剣男士、手練れである。そんな彼らに本気でこられたら手加減などできるはずもなく、少し痛い目を見てもらう予定を変えて、叩きのめすつもりでやったのだ。しかし、やりすぎたと思う。まさか中傷にさせてしまうとは。手入部屋で「ごめんなさい」と頭を下げれば「僕が見誤っただけだから気にしないで」とむしろお礼と謝罪を言われた。
 彼らにとってはこんな小娘でも、主であるのだから、手合せとはいえ怪我をさせてしまったことを気にしていたのだ。大丈夫、としつこく心配する乱藤四郎を寝かしつけたばかりだというのに。
 能面のような、感情もなにもない顔をした清光に、小さく息を吐く。
「ここ、二十数年。真剣など握ってなかったんだ。戦うなら少しでもあの感覚を思い出さないと、戦場にはでれない。腕も落ちてる。だから頼んだんだ」
「主は、十分じゃない?」
「このままで生き残れる?」
 清光は答えない。
「これから敵が強くなっていくかもしれない。前線に出ることがなくなっても、不意打ちを食らうかもしれない。自分の身ぐらい守れないと、君たちを置いていくことになる」
 ここでやっと、清光が表情を表に出した。
 ぐしゃり、と顔が歪む。苦笑して、手を握った。
「君たちは刀剣で、わたしは主だ。でもね、こうやって一緒に過ごすうちに、君は家族のような、大事な存在になるんだよ。だめかなぁ」
「だめじゃない」
 鼻声で、それでもはっきりと清光は即答した。ぽろり、と零れた涙が、月の光を反射して光る。まるで宝石のようだ。
「だから強くありたいんだよ。少しは信じてほしいなぁ」
「しっ信じてるよ!当たり前じゃん!」
「じゃあ、これからも手合せよろしくね」
「うん!」
 きゅっと握り返された手に、笑う。
 存外、可愛らしい子だ。
 擦る手を止めて、涙を拭う。嬉しそうに笑う清光に、自分も破顔したのだった。



===========================
鍛刀の初刀剣男士は乱藤四郎でした~~。
しおがプレイしていてそのままなのを出しています。
乱ちゃんはあんな感じなのに男って感じだととても萌えます。

次はペダルかきたいな~~~~
「清光ー」
 縁側で日向ぼっこしている清光を呼ぶ。すぐさま反応して、こちらまで歩いてきた。自分が向かって歩いている最中だったというのに、健気なことだ。待っていても良かったのに。
「なに?主。初めての鍛刀は終わったの?」
「うん。こんのすけに手伝ってもらってね」
「ふーん」
「新しい子はまだ来ないよ。しばらくかかるって」
「へぇ」
 無関心な風を装っているようだが、気にしているのがバレバレである。
 愛されたいが故に、愛されいてると信じていたいが故に、彼は近侍にこだわる。そして次にくる刀剣男士をよしとしない。随分と駄々をこねられて、鍛刀にとりかかるまでに二週間ほど費やした。彼と自分の間に信頼関係を構築するには、もう少しかかるだろうと思っていたけど、この程度で済んでよかったというべきなのか、どうなのか。僅かでも絆をもてたけれど、まだまだこれからだろうなぁと思うと、ため息を禁じえない。
 じぃ、と見上げたままで何も話さない自分に、清光は大人しく次の言葉を待っている。素直で良い子だ。ただ、焼きもちと承認欲求(だと思う)が強いだけで、可愛い良い子なのだ。
「主?」
「あぁ、ごめんごめん」
 こてん、と首を傾げた清光に、笑って手を伸ばす。頭をなでてやると、嬉しそうに目を細める。青年の体をしているし、生まれた年数を考えれば自分よりも随分と年上であるのに、まるで子供のようだ。可愛がらないわけがない。
「清光に手伝って欲しいことがあるんだ」
「なになに?なんでもやっちゃうよ、俺」
「頼もしいね。じゃあお願いしようかな」
 にこり、と笑う。清光も笑う。
「今日から自分と手合わせして欲しい」
 ぴしり、と固まった笑みに、片手にぶら下げていた刀を持ち上げた。
 無名刀だ。変に銘のある刀を使うものなら、きっと拗ねてしまうだろうという推測から、こんのすけに用意してもらった。
 清光から少しだけ距離を取り、地面と平行に胸の前まで持ち上げて、すらり、と刀を抜いた。
 なかなか良い作りをしているなぁ、と検分していれば、清光は無表情をこちらを見ている。硬い表情だ。次にくる言葉はわかっている。
「いやだ」
 予想通り。
「どうして?」
「主は俺が守るから、そんなの必要ない」
 これも、予想通り。
「だめ。自分も戦場に出るんだ。戦える力がないと生き残れない」
「だから、俺が死なせないって」
「うん、清光のこと信頼してる。けれど、万が一、ということもある」
「ないよ」
「全ての物事に絶対ってないんだよ、清光」
 ぐっと言葉につまり、眉を寄せて俯く。自分の方が背は低いから、どんな顔をしているか真正面から見えた。
 それに悲しくなりつつも、刀を仕舞い、腰にさして、両手でぶら下がっているだけの手を握った。低い、体温だ。
「大丈夫、これでも戦闘経験はあるんだ」
「こんのすけはお前が平和な国で生きていたって言ってた」
「そうだね。でもちょっとした事情があってね、戦争に参加したことがあるんだ」
「なにそれ」
「これは教えられない」
「なんで」
「これは一生、自分の胸の内に留めて墓まで持っていくと決めているから」
 ぎゅっと、握る手に力こめて、微笑む。
「清光でも教えられない。誰にも教えるつもりはない」
「……あっそ」
 きゅっと口を窄めて、拗ねたような顔になる。そのことに一安心をして、笑みを深めた。さぁ、ここからだ。
「でもやっぱさ、戦う必要ないよ。主が前線にでてくること、きっとないしさ」
「清光」
「うん、わかってる。いってたことよくわかる。だから、俺が守るからその間に逃げちまえばいいんだ」
「清光、わかってないね」
 名案だとばかりに笑う清光に、少しだけ低くした声をぶつける。
 何をいっているのか、理解しているのだろうか。
 それてってつまり、清光を犠牲にして生き延びろといっているんでしょう?
 そんなこと、許すものか。
「清光、君に死んで欲しくない。壊れて欲しくない。一緒に生きて欲しいんだよ」
「主、それは間違ってる。俺たちは刀だ。主を守るためにある存在なのに、主が刀を守ってどうするのさ」
「君がいま、この手にある刀のようだったら、そうだったかもしれないね。でもさ、こうやって話をして、一緒にご飯を食べて、暮らして、どうしてそう思えるの?」
 清光の目を真っ直ぐに見る。綺麗な赤だ。柘榴のよう。食べれたら美味しいのだろう、なんて頭の片隅で変なことを考えた。
「大事な人は守りたいよ、自分は。清光は?違う?」
「……違わない」
 頬を赤く染めて、やはり拗ねたようにいう。可愛らしいことだ。
 握っていた手を握り返されて、嬉しくて笑う。
「主は死なせない。俺も死なない。だから、手合わせしよ」
「ありがとう、清光」
「でも、俺以外とはやめてよね」
「はいはい」
「絶対だからね?!」
「わかってるよ」
 ははは、と笑いながら、二人で距離を取る。腰にさした刀を抜いて、構える。清光も、すらり、と己自身を抜いて、構えた。
 綺麗な立ち姿だ。
 一瞬だけ見惚れ、ぎゅっと柄を握る手に力を入れて、地面を蹴った。
 さぁ、清光。
 一緒に生き残ろう。




====================================--
清光との手合わせでした。
跳躍主は守られてるだけはいやなので自分から戦場にでる子です。
でもブランクがあるので、清光に鍛えてもらおうっていう話ですね。

最近は夢でなく、BLばかりで活動しているので、放置状態ですみません。夢は妄想してますよ!とうらぶしかりペダルしかり。
ただ、その、まなみさんがくとおのださかみちの関係性が尊すぎてしばらく帰って来れません。
まなみ夢のネタもあるっちゃあるので、いつか形にできたらいいなって思ってます。

とにかくしおは元気です。
いろいろ続き書きたいけど時間がなーあー。



『どこで合流するの?』
『てかあんたいまどこなの』
『パチと一緒にいる』
『つまり?』
『チャリ部部室』
『行くわ』
『はーい』
 一分もかからずでやり取りされた必要最低限な会話を読み直し、スマホを切った。真っ暗な画面になったことを確認してポケットに突っ込み、向かう先を部室が並ぶ区域へと変更する。
 入学式は一緒だったが、クラスは別だった。しばらくはクラスに慣れるために別行動を取っていたとはいえ、何かと一緒だったため、とても久しぶりな気がする。しかしパチと一緒と聞いて少しだけ嫌な予感がした。面倒なことになっていないといいが、どうなっていることやら。
「面倒ごとは好きじゃないんだよなぁ」
 ぼそり、と呟いて見えてきたチャリ部部室にため息をついた。





 ドアにノックするとすぐに開いた。と同時にふわり、と良い香りが漂い、腕の中に女の子が飛び込んできた。突然にも関わらず、きっちりと抱きとめる。
「空ーーーー!」
「はいはい奈津さん数日ぶり」
「クラス溶け込めた?!私いないけど平気?!あぁ心配だよ空ってば変人だから!」
「あのねぇ…言いたいことはわかるけど自分は奈津のほうが心配だよ…」
「え?そう?案外良い感じだよ」
 肩口にぐりぐりと額を押し付けていた奈津の頭を撫でてため息交じりにそういえば、きょとんとした声が返ってくる。そして少しだけ体を離してにっこり笑う奈津は本当に血縁かと思うほどに可愛らしい。可愛らしいからこそ心配だ。クラスの人たちが。
「空」
「あ、パチ、久しぶり」
 なにやら眉を寄せて近寄ってくる幼馴染に、簡単に挨拶する。
「あぁ、久しぶりだ。っとその前に、お前たち水臭いぞ!ここに通うなんて一言も聞いてなかったんだぞ俺は!」
「え?奈津が話したんじゃないの?」
「びっくりさせたくて秘密にしてた!」
 悪びれもなくいう奈津に「あぁそう…」とだけ返してパチこと東堂尽八に諦めろという目を向けた。パチはため息をつきながらも仕方ないな、といわんばかりに小さく笑う。
「んで、この惨状はなに?」
 できるだけ気にしないでいたが、いや、完全に無視していたが、そろそろ突き刺さる視線にそれが難しくなっていたため直球で聞いた。奈津とパチの後ろにはどんよりとした重たい空気があり、部室内の人は例外なく疲れた顔をしている。なんとなく、なんとなく察しはつくが、事情を聞かなければならないだろう。払拭できるのはたぶん自分だけだ。
 どうなの?と二人に目を向ければ、奈津とパチは目を合わせて同じタイミングでこちらを見る。さすが小さい頃からつるんでいるだけある同調っぷりだ。
「奈津が部室にきて」
「久々の再会を楽しんでたら」
「「こうなった」」
「なるほど理解した」
 すっと何気ない動作で自分から離れ、パチの体に手を回す奈津と、当たり前だといわんばかりの自然な動作で奈津の肩に手を回すパチに盛大なため息をつき、チャリ部に同情した。
 バカップルの意味不明な言動に振り回されたわけだ。もう一度ため息をつき、こちらを伺って突き刺さる視線に遠い目をする。振り回されるのは慣れた。慣れたが、いい加減二人で場を収めてくれないだろうか。切実に、そう思う。
 米神を押さえつつ、気分を入れ替えるために大きく息を吐き出した。
 顔をあげて、自体の収集をするためにパチの顔をみる。あぁ美形だな相変わらず。
「パチ、チャリ部のキャプテンは?副キャプでもいいや」
「いまはいないな。副キャプはいる」
「じゃあ副キャプ紹介して」
「なんだ?」
「え?いやだから、副キャプ」
「だから、なんだ?」
「…」
 かみ合わない言葉に互いに首を傾げるが、もしかして、いやそんな、でもそうとしか。
「…パチ、副キャプ?」
「あぁ!いかにも!」
 自信満々な笑みを浮かべるパチに、卒倒しそうだった。
 おいチャリ部…大丈夫か…。





「お前らダレ?」
「東堂尽八の幼馴染です」
「同じ顔ってーことは?」
「双子ですね。一卵性の。髪の長さで判断してください」
「アイヨ。あいつらの関係性は?」
「結婚する仲です」
「それは聞いたヨ。付き合ってんの?」
「付き合ってないです」
「ナンデダヨ」
「結婚する約束はしてますし、互いに互い以外あり得ないと決めてます。それだけで付き合ってはいないんですよ…」
「いや付き合うダロそこは…」
「本人たちがそうじゃないっていうなら、そうなんじゃないですかね…」
「意味わかんネェ…」
 目の前で頭を抱える、この間知り合った荒北靖友に哀れみの目を向けた。
 とりあえず話がわかるやつ、そしてキャプテンに近しい人という条件で人を呼んでもらったら、ついこの間知り合ったばかりのこの人がでてきたため互いに驚いた。
 荒北靖友は突然訪れた奈津にまず驚き、自分と勘違いしてかみ合わない会話に首をかしげ、そしてパチと奈津のゲロ甘い掛け合いに部室の隅で死んでいたらしい。気持ちはわからなくないので「ご愁傷様です」と声かければ「ありがとネ…」なんて案外素直な言葉が返ってきた。それほどにダメージはでかかったということらしい。
 部室のど真ん中の机に向かい合い、周りにも聞こえるように聞かれた内容について答えていくが謎が深まるばかりのようで、部室内の空気は不可思議なものへと変化していく。全員が全員、あまり理解できないとばかりに頭を悩ませているようだった。やはり気持ちはわかるので、相変わらず周りを気にせず二人で話をしている奈津とパチに「大人しくしてないさい」と声をかけた。
「まぁ将来誓いあってるんで、バカップルだって思っとけば解決じゃないですかね」
「んー…まぁそうだろうナ…そうするワ…」
 もう頭を悩ませるのが面倒になったらしい荒北靖友は、適当に相槌を打って話を終わらせようとする。周りも諦めてきたらしく、各々の行動へと戻っていった。
「んじゃ、帰りますね。奈津」
「はーい。パチ、またね」
「あぁ!また明日」
 呼べばあっさりと離れた二人に、荒北靖友は意外そうにみやる。隙あらばさり気なく寄り添う二人をみていれば、もう少し惜しむだろうとでも思ったのだろう。それに小さく笑って、かばんを持った。
「ただのバカップルじゃないんですよ、将来誓いあった二人ってことです」
「あぁー…よくわかんねーけど、なんとなく察したワ」
「それで十分です。全部付き合うと疲れますよ」
「なァにィ?経験者は語るってやつゥ?」
「そうです」
 にこり、と笑って言えば、引きつった笑みを浮かべる。
「あれと一生付き合ってかないといけない自分を察してくださいマジデ」
「いやほんとワリィ」





(知りきれトンボごめんなさい、時間なくなった。Wヒロインでした。東堂固定です。あと真波予定)
とりあえず前後の女子に話しかけてみようと、緊張しながら声をかけたのは入学式の翌日。その子から広がってそこそこにクラスの女子と会話をするようになったのはその数日後。これで移動教室だのペアだのは安心だな、と思った矢先の出来事だった。
「遅刻しましたー」
 そういって堂々と、教室の前のドアから入ってきた男子に視線が集まる。授業を開始して十数分は立ち、しかもいまは二時限目だった。遅刻は遅刻なのだが、そんなに堂々としていていいのだろうか、と教卓の近くで叱られている男子を呆れたように見る。遅刻理由に「良い坂があったので」とか意味のわからない理由を述べているあたり、あぁこれは関わらないほうがいいな、と悟った。
 人のことは言えないが、変な人に関わるとあまり良いことはなかったから仕方ないことだろう。
「もういい、席につきなさい」
「はーい」
 叱っても無駄だと判断したらしい教師が、ため息をつく。遅刻した男子はへらへらと笑っているし特に気にした様子もないので、正しい判断だといえよう。あとで教育指導係から呼び出し食らうだろうな、なんて考えていたら、その男子はあろうことにも自分の隣の席に座ったのだった。
 軽く目を見開いて、ちらり、と隣を見る。
 爽やか系イケメンだった。
 さっきの変なところがなければ、人気がでるだろう男子だ。いや、それでも人気はでそうだ。
 イケメンは得だよなぁ、なんてぼんやり思って、意識を授業へと集中させた。頭のつくりは良くないが、この学校へと入れてくれた両親のためにそこそこの成績を叩き出さなければならないのだ。こんな、本能が訴える"関わってはいけない人間"に構っている暇などない。
 そうやって隣の存在を除外していたために気づかなかった。爽やか系イケメンがちらり、と自分を見たことに。


■■■


 生徒の半分以上が寮生活な箱根学園には、その生徒のために学食が存在している。自宅から通う生徒は弁当という暗黙のルールがあるのか、利用するのは寮生活をしている生徒が大半だ。稀に弁当を忘れてきたり家庭の事情から学食を利用している生徒がいるが、寮に所属しない生徒はほぼ弁当を持参しているというのだから、校則にでも書かれているのだろうかと生徒手帳を確認したのは記憶に新しい。特に記載はなかった。
 ぴっと券売機で目的の食券を買い、列に並ぶ。何度か学校へと通ってはいるが、学食は初めてだなぁ、と待ち時間の退屈さに欠伸をした。
 仲良くなった子たちは弁当持参組だったため、昼ごはんは一人寂しく過ごすことになった。気を使ってくれようとしたが、それは丁寧に辞退した。弁当は彼女らの母親が作っているんだろうし、自分の都合でそれを無駄にはさせたくなかったのだ。そのぐらいなら一人でご飯ぐらい食べるわ。そんな意気である。女子特有の群がり症候群のようなそれは自分にはもうない。あぁでもこれじゃあ浮くかなぁ、と本日の昼食である和食定食のおぼんを持ちつつ、席を探した。適度にあわすことも必要だな。現代社会の面倒なところだ。
 空席を一つみつけ、隣の人に声をかける。
「すみません、ここ良いですか?」
「アッ?!…あぁ、かまわねェヨ」
「ありがとうございます」
 眼光鋭く返事され、びっくりしてしまったが了承の言葉は返ってきたので、そのまま座る。そのことに隣の男子は、器用にも片眉をあげて驚いているようだった。察するに、あぁいう対応がデフォなのだろう。だから良いといって座る人はあんまり居なかったための反応のようだ。あの程度でびびるほどではないのだが、あんまり度が過ぎるとやはり浮くなぁ。…面倒だから諦めよう。
 ぱん、と手を合わせて「いただきます」と言い、昼食に手をつける。斜め前から突き刺さる痛い視線は無視だ。
「おめさん、すごいな」
 できなかった。
「おい、新開。いきなり話しかけてんじゃねェヨ」
「いやだって、荒北も驚いただろ?」
 どうやら隣の人の友人らしく、制止の声が入る。是非そのままちょっかい出させないようにしてくれ。見知らぬ人に話しかけられながら食べるご飯は疲れる。
「そりゃ…ってそういう話じゃねぇだロ」
「なぁなぁ、おめさん、名前なんていうんだ?俺は新開隼人っていうんだ」
「おい、聞けよ!」
 にこにこと笑いながら話しかけてくる新開隼人という男子は、隣の人の声を無視して人懐っこい笑みで「ん?」と無表情で見つめ返す自分に、首を傾げて返答を求める。その仕草が男子だというのに可愛らしく見え、あぁこれが俗に言う甘いマスクとかそういうのだろうか、なんて考えてしまった。サブいぼが立ったのは言うまでもない。
 ていうかまたイケメンかよ。
「はぁ…」
「困ってンじゃねぇか!あー…こいつが悪いね、突然」
「いえ…」
 新開隼人の頭を一発殴ってから、隣の人は簡単に謝罪を入れる。それに軽く会釈して昼食へと戻った。ちらり、と時計をみるとのんびりと食べている暇はなさげで、隣でわぁわぁ騒いでいるのを視界に収めないようにしつつ、気づかれないようにため息をつく。あ、このしょうが焼き美味しい。
「あ、荒北さんだー」
「ゲッ真波…」
 学食にしては美味しいな、と舌鼓を打っていると、どこからか聞いたことのある声が聞こえてきた。一瞬だけ反応するが、声をかけられるはずがないと箸を進める。
「ここ空いてるみたいなんでお邪魔しますねー」
「おぅ、いいぜ」
「他にも席空いてるだろーが。いちいち近くに座ンな、新開も真波も」
「そんな寂しいこというなよ、一緒に食おうぜ?」
「ウッゼ」
「いいじゃないですかーたまにはーって、あれ、高野さん?」
 かたん、と目の前に置かれたおぼんと同時に降ってきた自分の名前に、ぴたり、と箸をとめる。
 硬い動作で目を上げれば、何故か笑顔の隣の席の遅刻した男子がいた。
 てか何でお前名前知ってんだよ。
「真波、知り合いか?」
「はい、隣の席の人です」
「それ知り合いっていうのかヨ」
「あー話したことは一回だけですね」
 その言葉に目を丸くすれば、「あれ?覚えてない?」と首を傾げながら遅刻男子は前の席に座る。いやだからその仕草可愛く見えるイケメン怖い。
「えっと…実は」
「そうなの?ショックだー」
「はぁ、それはすみません」
「本当覚えてない?」
 ずいっと身を乗り出して覗き込まれる。近くなった分だけ身を引けば、隣の人が「あぶねぇから乗り出すナ」と顔を引っつかんで押し戻していた。どうやらこの人、世話焼き属性があるらしく、たぶん苦労人だ。感謝を述べれば「別に」と素っ気無い言葉が返ってきた。
「荒北さん、なに高野さんと仲良くなってるんですか、ずるい」
「ずるいじゃねーよ、オメェらのせいだろうが」
「えーーーー!じゃあ高野さん、俺とも話そうよ」
「俺はお前らの馴れ初めが気になるんだが?」
「あ、そうだった」
 騒々しく言葉をが行きかう様を眺めつつ、次にこの人たちの近くには座るまい席がなかろうとも、なんて硬く決意してご飯を頬張った。いつの間にか目の前の遅刻男子は食事を開始していてすでに半分近く胃に送り込まれており、自分は未だに三分の一程度しか食べれていないという事実に気が遠くなりそうだ。
 ご飯を食べさせてくれ、頼む。
「ついこの間ですよ、俺、こうやって高野さんと向かい合ってご飯食べたんです」
 突然始まった語りにちらり、と前に目をむければ、何故かきらきらと輝いた目で見られている。まるで「思い出した?思い出した?」といわんばかりの光景に、いつぞやかのCMを思い出して少しだけ努力しようかと記憶に検索をかける。
 学食で、ついこの間で、お話をした。なるほど、思い出せない。
「…思い出せてねーみてェだぞ」
 隣の人が代弁する。
「ほんとに?」
 いやごめんもっとがんばるからそんな目を向けないでくださいごめんなさい。
「…かわいこぶる真波はじめてみたぜ」
「気色悪ィ…」
 うーんうーんと唸る自分の隣で、そんな会話がなされていた。これ素じゃないならなんでかわいこぶってんだこいつ、なんて思いつつ、それに意識を持ってかれそうになるのを堪えて検索をかけ続ける。
「…あ」
「思い出した?!」
 遅刻男子にシッポがあったら盛大に振られていただろうと思うぐらいには全身で喜びを表現している様に、ひくり、と体を震わせて少しだけ引いた。隣の席とはいえ、よくも知らない人から全力で懐かれているなんて怖い以外にあり得ない。なんだこれ。
「…なんか、ご飯食べておなか壊したっぽかったから、薬あげたんですよ、ね…?」
 そう、そうだ。ご飯を食べていたら目の前の子が、青い顔して食べかけのご飯を残してどこかへと立ち去ったのだ。そして戻って来て、なにやらご飯を目の前に迷っていて、察した。おなかを壊しているのではないか、と。丁度同じく、少し前におなかを壊して病院へと駆け込んでいたため、人事とは思えずに話しかけ、処方された薬を分けたのだった。
 あぁそうだった。その子は確かにこんな顔をしていたような気がする。
「それ!!大正解!!!」
「ふぅん、優しいんだな、君は」
「あ、いえ、別に…」
 可愛らしい女の子ならばときめいてしまいそうな新開隼人のセリフと顔に、困ったように曖昧に笑う。隣の人は「あ、引いてんな」ていうのはわかったらしく、何も言わなかった。
 遅刻男子はきらっきらした顔で嬉しそうにしているし、たったあれだけが一体どうしてそんな風になったというのだろう。
「俺!あの時めっちゃ困ってて!このままじゃ山のぼりにいけない…てすげー落ち込んでたし痛かったんだけど、あの薬もらって飲んだら嘘みたいに痛み引いて治ってさ!」
「あ、まぁ、病院で処方された整腸剤ですし…」
「すげー助かったんだ!!お礼言おうにもそのときにはもういなくて、あとで隣の席ってわかってもタイミング掴めなくてさ。あの時は本当にありがとう!」
「あ、はい、どうも」
 同情でした行為にここまで感謝されると、なんだか申し訳なくなるのはなんでだろう。全力で向けられる好意に、遠慮がちに頭を下げた。
 そして鳴る、予鈴。
「おい、お前ら予鈴なったゾ。あんたは…ぎり大丈夫そうだな」
「はっはい」
 予定が聞こえた瞬間、残っていたご飯を掻きこんだ。お冷で流し込んで、一息つく。明日こそはのんびりとご飯を食べたい。
「こんな気分いいのに授業なんかやってらんないんで、俺走ってきまーす!」
「あっおい真波!」
「あ、高野さん、俺は真波山岳!よろしくね!」
 去り際に自分の名前を言い置いていき、隣の人の手を掻い潜って颯爽と走っていった。きちんとおぼんを返却台にまで持っていっているあたり、しっかりしているというか抜け目がないというか。
 苛立たしげにため息をつく隣の人を見ると、目があって互いに微妙な空気が流れた。
「あー…馬鹿たちがすまねェ」
「いえ、こちらこそ」
「俺は荒北靖友だ。あいつの先輩ってとこだナ。新開もそうだ」
「自分は高野空です」
「高野さんか、今日は楽しかった。また今度ご飯一緒に食おうぜ」
「いえ、遠慮します」
 イケメンとご飯だなんて目立って仕方がない。やっかみもありそうだし、できれば避けたいところだった。そう思っての返事に、新開隼人は笑った。
「そういわずに食おうぜ」
「そうですか。苦労してますね、荒北さん」
「わかってくれてうれしいヨ」





(疲れたのでここまでで。真波山岳になつかれてみました)
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