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ふらっと徒然に。
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『どこで合流するの?』
『てかあんたいまどこなの』
『パチと一緒にいる』
『つまり?』
『チャリ部部室』
『行くわ』
『はーい』
 一分もかからずでやり取りされた必要最低限な会話を読み直し、スマホを切った。真っ暗な画面になったことを確認してポケットに突っ込み、向かう先を部室が並ぶ区域へと変更する。
 入学式は一緒だったが、クラスは別だった。しばらくはクラスに慣れるために別行動を取っていたとはいえ、何かと一緒だったため、とても久しぶりな気がする。しかしパチと一緒と聞いて少しだけ嫌な予感がした。面倒なことになっていないといいが、どうなっていることやら。
「面倒ごとは好きじゃないんだよなぁ」
 ぼそり、と呟いて見えてきたチャリ部部室にため息をついた。





 ドアにノックするとすぐに開いた。と同時にふわり、と良い香りが漂い、腕の中に女の子が飛び込んできた。突然にも関わらず、きっちりと抱きとめる。
「空ーーーー!」
「はいはい奈津さん数日ぶり」
「クラス溶け込めた?!私いないけど平気?!あぁ心配だよ空ってば変人だから!」
「あのねぇ…言いたいことはわかるけど自分は奈津のほうが心配だよ…」
「え?そう?案外良い感じだよ」
 肩口にぐりぐりと額を押し付けていた奈津の頭を撫でてため息交じりにそういえば、きょとんとした声が返ってくる。そして少しだけ体を離してにっこり笑う奈津は本当に血縁かと思うほどに可愛らしい。可愛らしいからこそ心配だ。クラスの人たちが。
「空」
「あ、パチ、久しぶり」
 なにやら眉を寄せて近寄ってくる幼馴染に、簡単に挨拶する。
「あぁ、久しぶりだ。っとその前に、お前たち水臭いぞ!ここに通うなんて一言も聞いてなかったんだぞ俺は!」
「え?奈津が話したんじゃないの?」
「びっくりさせたくて秘密にしてた!」
 悪びれもなくいう奈津に「あぁそう…」とだけ返してパチこと東堂尽八に諦めろという目を向けた。パチはため息をつきながらも仕方ないな、といわんばかりに小さく笑う。
「んで、この惨状はなに?」
 できるだけ気にしないでいたが、いや、完全に無視していたが、そろそろ突き刺さる視線にそれが難しくなっていたため直球で聞いた。奈津とパチの後ろにはどんよりとした重たい空気があり、部室内の人は例外なく疲れた顔をしている。なんとなく、なんとなく察しはつくが、事情を聞かなければならないだろう。払拭できるのはたぶん自分だけだ。
 どうなの?と二人に目を向ければ、奈津とパチは目を合わせて同じタイミングでこちらを見る。さすが小さい頃からつるんでいるだけある同調っぷりだ。
「奈津が部室にきて」
「久々の再会を楽しんでたら」
「「こうなった」」
「なるほど理解した」
 すっと何気ない動作で自分から離れ、パチの体に手を回す奈津と、当たり前だといわんばかりの自然な動作で奈津の肩に手を回すパチに盛大なため息をつき、チャリ部に同情した。
 バカップルの意味不明な言動に振り回されたわけだ。もう一度ため息をつき、こちらを伺って突き刺さる視線に遠い目をする。振り回されるのは慣れた。慣れたが、いい加減二人で場を収めてくれないだろうか。切実に、そう思う。
 米神を押さえつつ、気分を入れ替えるために大きく息を吐き出した。
 顔をあげて、自体の収集をするためにパチの顔をみる。あぁ美形だな相変わらず。
「パチ、チャリ部のキャプテンは?副キャプでもいいや」
「いまはいないな。副キャプはいる」
「じゃあ副キャプ紹介して」
「なんだ?」
「え?いやだから、副キャプ」
「だから、なんだ?」
「…」
 かみ合わない言葉に互いに首を傾げるが、もしかして、いやそんな、でもそうとしか。
「…パチ、副キャプ?」
「あぁ!いかにも!」
 自信満々な笑みを浮かべるパチに、卒倒しそうだった。
 おいチャリ部…大丈夫か…。





「お前らダレ?」
「東堂尽八の幼馴染です」
「同じ顔ってーことは?」
「双子ですね。一卵性の。髪の長さで判断してください」
「アイヨ。あいつらの関係性は?」
「結婚する仲です」
「それは聞いたヨ。付き合ってんの?」
「付き合ってないです」
「ナンデダヨ」
「結婚する約束はしてますし、互いに互い以外あり得ないと決めてます。それだけで付き合ってはいないんですよ…」
「いや付き合うダロそこは…」
「本人たちがそうじゃないっていうなら、そうなんじゃないですかね…」
「意味わかんネェ…」
 目の前で頭を抱える、この間知り合った荒北靖友に哀れみの目を向けた。
 とりあえず話がわかるやつ、そしてキャプテンに近しい人という条件で人を呼んでもらったら、ついこの間知り合ったばかりのこの人がでてきたため互いに驚いた。
 荒北靖友は突然訪れた奈津にまず驚き、自分と勘違いしてかみ合わない会話に首をかしげ、そしてパチと奈津のゲロ甘い掛け合いに部室の隅で死んでいたらしい。気持ちはわからなくないので「ご愁傷様です」と声かければ「ありがとネ…」なんて案外素直な言葉が返ってきた。それほどにダメージはでかかったということらしい。
 部室のど真ん中の机に向かい合い、周りにも聞こえるように聞かれた内容について答えていくが謎が深まるばかりのようで、部室内の空気は不可思議なものへと変化していく。全員が全員、あまり理解できないとばかりに頭を悩ませているようだった。やはり気持ちはわかるので、相変わらず周りを気にせず二人で話をしている奈津とパチに「大人しくしてないさい」と声をかけた。
「まぁ将来誓いあってるんで、バカップルだって思っとけば解決じゃないですかね」
「んー…まぁそうだろうナ…そうするワ…」
 もう頭を悩ませるのが面倒になったらしい荒北靖友は、適当に相槌を打って話を終わらせようとする。周りも諦めてきたらしく、各々の行動へと戻っていった。
「んじゃ、帰りますね。奈津」
「はーい。パチ、またね」
「あぁ!また明日」
 呼べばあっさりと離れた二人に、荒北靖友は意外そうにみやる。隙あらばさり気なく寄り添う二人をみていれば、もう少し惜しむだろうとでも思ったのだろう。それに小さく笑って、かばんを持った。
「ただのバカップルじゃないんですよ、将来誓いあった二人ってことです」
「あぁー…よくわかんねーけど、なんとなく察したワ」
「それで十分です。全部付き合うと疲れますよ」
「なァにィ?経験者は語るってやつゥ?」
「そうです」
 にこり、と笑って言えば、引きつった笑みを浮かべる。
「あれと一生付き合ってかないといけない自分を察してくださいマジデ」
「いやほんとワリィ」





(知りきれトンボごめんなさい、時間なくなった。Wヒロインでした。東堂固定です。あと真波予定)
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